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米国・イランが戦闘終結で合意しても、中東情勢の緊張が終わらないワケとは?

和田 大樹 和田 大樹

 米紙ニューヨーク・タイムズは、戦闘終結に向けた米国とイランの協議において、両国が原則合意に達したと報じた。合意案には、イラン側が高濃縮ウランの処分を約束することや、ホルムズ海峡を開放することが条件として盛り込まれており、これらを通じて戦闘を終結させる内容である。

 ただし、この合意にはまだ署名がなされておらず、最終的な決定にはトランプ米大統領とイランの最高指導者による承認が必要となる。関係者の話では、この最終承認には数日かかる見通しである。トランプ氏は交渉が最終段階にあるとしつつも、慎重に見極める姿勢を崩していない。

 一方、今後戦闘終結が正式に宣言されたとしても、我々はそれを表面上の終結でしかなく、中東情勢の緊張が今後も続くシナリオを描いておく必要がある。なぜならば、11月の米中間選挙を抱えるトランプ大統領としては、戦闘を早期に終了させ、原油高による国内経済への影響を最小限に抑えたいと考える一方、イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの核開発だけでなく、イランの現政治体制そのものが脅威であると認識しており、イランによる軍事的な怪しい動きがあれば常に先制攻撃を辞さない構えを維持しているからである。

3者の思惑や狙いには大きな乖離

 現在議論されている戦闘終結案は、米国、イスラエル、イランの3者が真に議論して進めているものではない。それぞれの思惑や狙いには依然として大きな乖離があり、この構図そのものが中東の安定を阻む最大の要因となっている。

 まずトランプ政権の主眼は、国内の政治基盤の安定と経済への悪影響の回避にある。中間選挙を控え、有権者の不満に直結するガソリン価格の高騰や、泥沼の軍事介入を回避するため、まずは対話による沈静化の実績を急ぎたいのが本音と言える。

 これに対してイランは、経済制裁や軍事的な圧力による国内の疲弊を打開し、現体制の存続を図ることを最優先課題としている。ウラン処分や海峡開放というカードを切ることで、一時的に緊張を緩和させ、国際社会からの孤立を防ぐという実利的な狙いがそこには透けて見える。

 しかし、これら2国の思惑は、イスラエルが抱く危機感とは根本的に異なる。イスラエルにとって米イラン間の合意は、一時的な時間稼ぎに過ぎず、イランの本質的な脅威、すなわち反イスラエル姿勢や周辺国への代理勢力拡大といった根深い問題を何ら解決するものではない。

イスラエルという不確定要素

 こうした背景から、イスラエル側には自国の安全保障に直結する核心的な問題が、米イランの頭越しの交渉によって妥協されることへの強い不信感が渦巻いている。そのため、今回の合意が正式に署名されるかどうかにかかわらず、イランによる軍事的な拠点の構築や、周辺武装勢力への武器供与など、少しでも疑わしい動きが検知されれば、イスラエルが自衛を名目にいつ先制的な軍事行動に踏み切ってもおかしくない情勢が続くことになる。

 結局のところ、今回の合意案は当事国間の火種を根本から消し止めるものではなく、あくまで利害や思惑の一致した部分だけで対立を一時的に凍結させる応急処置に留まる。中東地域における安全保障のジレンマは全く解消されておらず、イスラエルによる独自の強硬策という不確定要素を抱えたまま、情勢は今後も激しく流動していくと予想される。

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