京都府京田辺市宮津の佐牙神社の神事で、市無形民俗文化財に指定されている「湯立(ゆだて)」を担う巫女(みこ)を、地元の大学生が務めることになった。数年前に前任者が亡くなって以降、継続が危ぶまれていた。今秋のデビューに向けて練習に励み、氏子らは「ありがたい。安心して任せたい」と温かく見守っている。
手を挙げたのは森村心桜(こころ)さん(20)=同市=。佐牙神社宮司の章仁さんの長女で、現在は関西学院大で学び、いずれは父の跡を継ごうと、夏場に神職養成学校へ通っている。「もともと神社や日本史が大好き。巫女役はまさかでしたが、父から頼まれたときも『私がやるわ』と即答しました」と笑顔で振り返る。
佐牙神社の起源は573年とされ、平安期の桓武天皇の時代に現在の地に建てられたと伝わる。毎年10月に営まれる祭礼行事「山本の百味(ひゃくみ)と湯立」は1994年に市無形民俗文化財に指定。神社近くの山本御旅所で約100種類の農産物を神棚に供える「百味」や、巫女がササで釜の湯をすくい参拝者に振りかけて無病息災を願う「湯立」などが地域で守られてきた。
中でも湯立は多くの参拝者が訪れる「行事の華」として位置づけられるという。氏子総代の藤井康夫さんは「以前の巫女が亡くなられ、存続に危機感があった。この間は臨時的に他神社の巫女に来てもらい、なんとか継続できた。森村さんに務めていただき、大変感謝している」と喜んでいる。
来たるべき神事に向け、森村さんは経験者の中瀬恵子さん(73)の指導を受けながら、動画配信サイトに残る映像も参考に、所作や舞の習熟を進めている。中瀬さんは「佐牙神社の舞は太鼓とかねの音に合わせ、独特なリズムがある。優雅に見せることも大切。本人は素直な性格で何事も受け止められるので、伝統をつないでほしい」と期待する。
森村さんは「神職になるための勉強も難しいが、宮司の家系に生まれて本当に良かったと思っている。ここでないと経験できないことも多い。本番で後悔のないようにしっかりと準備をしていきたい」と力を込める。