tl_bnr_land

沖永良部島で捕獲されたチョウ、約1000キロ飛んだ個体だった 岡山でマーキングした女性「羽ボロボロでも再会できて胸がいっぱい」

山陽新聞社 山陽新聞社

 鹿児島県・沖永良部島で捕獲されたチョウ「アサギマダラ」が、羽に記された文字などから岡山市内で放された個体と判明した。捕獲された3月26日にチョウの写真がX(旧ツイッター)に投稿されると、小さな命の大海原を越える長旅に思いを巡らせてか、1週間で表示回数は600万回超とバズった。このアサギマダラが放たれたのは昨年11月で、5カ月近い経過時間、さらには島で捕獲された時期から、研究者は「定説を覆す発見かも」と注目している。

▽渡り鳥のように

 アサギマダラは黒地にあさぎ色(薄い青緑)のまだら模様が美しい大型のチョウ。「旅するチョウ」として知られ、渡り鳥のように季節に合わせて海を超えて南北に移動する。そんなアサギマダラの飛行行動を調査しようと、捕獲した個体の羽に、日付や場所などを記して放す活動が有志によって行われている。その結果、秋の南下(下り)は沖縄県や台湾、遠くは香港まで飛び、春の北上(上り)は北海道や本州の高地を目指し、1000キロを超える長距離移動をすることが分かってきた。

 Xでの拡散もあり、今回見つかったアサギマダラは岡山市東区の柴久恵さん(75)が11月6日午後1時ごろ、区内の芥子山で放した雄と判明した。柴さんは2013年から知人の誘いで調査に参加している。これまでにも自身が放したアサギマダラの捕獲報告が届いたことはあり、遠方では沖縄県内からも2回連絡があったそうだ。

 そんな柴さんは昨年秋に184匹をマーキング。研究者らによると、マーキングして放したアサギマダラが再び捕獲される確率は1~2%とのこと。しかし今季、柴さんの元にはこれまで捕獲の連絡は届いていなかった。この個体は柴さんが184番目、つまり最後に放した個体で「寿命は4、5カ月と聞くので、ほぼあきらめていた。羽はぼろぼろになっていても写真で再会できて胸がいっぱい」。

 Xでも「地図を見てあらためてすごいと思う」「この小さな体で、ここまで旅してきたんだ」「自然の神秘感じるわ」「マークした人にこの投稿が届いて研究の輪が広がりますように!」といった投稿があふれる。ただこの話は、感動話にとどまらない可能性も。

▽年明けでもレア

 今回の捕獲に注目するのが、全国各地でマーキング調査を行っているアサギマダラの会(事務局・大阪府)。会報の編集を担当する藤野適宏さん(78)=京都府宇治市=によると、「下りの捕獲報告はほぼ年内で、年が明けるだけで珍しい。記録にある限りで最も遅く、マーキングから141日目も歴代7位の長さ。アサギマダラに半年近く生きる力があることを示している」。

 会の運営委員で元大阪市立自然史博物館学芸員の金澤至さん(69)=和歌山県田辺市=は「アサギマダラは18~25度の適温を求めて渡り、3月はもう北上の時季。北上するのは南下した個体の子や孫の世代と思われていた。マーキング調査では点しか分からないため、詳しい経路は特定できないものの、南下した個体が長生きして再北上した可能性がある」と指摘する。

▽地道な昆虫研究

 ところで、沖永良部島でこのアサギマダラを見つけたのは、三重大大学院生の仁平岳登さん(25)。仁平さん自身はアゲハチョウの研究者で、生態調査のため訪れていた。そこでアサギマダラを多数見かけた。その中で他の個体よりゆっくり飛び、羽の模様も異なるように見えた1匹を捕獲して確認したらマーキングの文字だったという。11月に放されたと知り「羽の傷みから羽化からかなり時間が経っていると推察したが、まさか5カ月近くたっていたとは」。

 Xの投稿が拡散した結果、翌朝には柴さんと連絡を取ることができた。「昆虫の研究は地道にマーキングする柴さんのような市民の貢献があって成り立つ。投稿が昆虫研究への理解を広めることにつながったならうれしい」と喜んでいた。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース