「夫婦で月22万円あれば何とかなると思っていたのに、実際は27万円かかっている」。都内在住の佐藤さん夫婦(仮名・68歳)は、年金生活に入って初めて家計の厳しさに直面しました。医療費や冠婚葬祭、家電の買い替えなど、想定外の出費が重なり、貯蓄を切り崩す日々が続いています。老後2000万円問題が話題になりましたが、実際、年金だけでは生活費が足りないという現実に、多くのシニア世帯が悩んでいるのです。
そこで、年金受給後に月5万円不足するケースを想定し、その不足を補うための現実的な方法を5つご紹介します。それぞれの具体的な金額やメリット・デメリットを理解することで、漠然とした老後不安を解消し、自分に合った選択肢を見つけるヒントにしていただければと思います。
なぜ「月5万円」なのか
総務省の『家計調査報告(2023年)』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均的な実支出(税金等を含めた総支出)は月額約28万2000円です。一方、公的年金などの実収入は平均で約24万5000円となっており、月々約3万8000円の不足が生じています。ここでは急な出費などにも備え、分かりやすく「月5万円不足する」と仮定して、具体的な対策を考えていきましょう。
▽①65歳以降も働き続ける
最も確実な方法は、収入を得続けることです。シルバー人材センターでは、清掃や軽作業、事務補助などの仕事を紹介しており、月5~8万円程度の収入が見込めます。また、スーパーやコンビニでのパート勤務なら、週3日・1日4時間程度で月4~6万円の収入になります(地域や就業、勤務日数によって差があります)。
メリットは、社会とのつながりを保ちながら健康維持にもつながる点です。デメリットとしては、体力的な負担や、働き方や賃金水準によっては、在職老齢年金制度の対象になる場合があります。もっとも、2026年4月以降は支給停止の基準額が65万円に引き上げられる予定です。
▽②住居費を削減する
持ち家がある方は、リバースモーゲージの活用が選択肢になります。リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借り、生活費などに活用できる仕組みです。また、地方移住により家賃を抑える方法もあります。東京23区で月10万円の賃貸が、地方都市では月5万円程度で借りられるケースもあり、その差額の5万円を生活費に回せます。
メリットは固定費を大幅に削減できる点ですが、デメリットとして、リバースモーゲージは相続時に自宅を失う可能性があり、地方移住は医療機関へのアクセスや友人関係の変化など、生活環境が大きく変わる点に留意が必要です。
▽③不要資産の売却・活用
車を手放すことで、自動車税、保険料、車検費用、ガソリン代などを含め年間30~50万円、月換算で2万5000円~4万円程度の節約になります。また、使っていない貴金属やブランド品、趣味のコレクションなどを売却することで、まとまった資金を確保できます。
メリットは即効性があり、維持費の削減効果も大きい点です。デメリットは、一度手放すと取り戻せないことや、移動手段の確保が課題になる場合がある点です。
▽④生活費の見直しとシニア割引の活用
携帯電話を格安SIMに変更する、不要なサブスクリプションを解約するなど、固定費の見直しで月1~2万円の削減が可能です。また、映画館や公共交通機関、スーパーなどでシニア割引を積極的に活用しましょう。これらを合わせると月2~3万円程度の節約効果が期待できます。
メリットは誰でもすぐに始められる点です。デメリットは、削減効果が比較的小さく、生活の質を下げすぎないバランスが重要な点です。
▽⑤公的支援制度を活用する
収入や資産が一定以下の場合、各種公的支援制度を利用できます。住居確保給付金は家賃相当額を支給する制度で、生活福祉資金貸付制度では低利または無利子で生活資金を借りることができます。また、医療費が高額になった場合の高額療養費制度や、介護サービスの自己負担を軽減する制度もあります。
メリットは、条件を満たせば支援を受けられる点です。デメリットは、申請手続きが必要で、所得制限などの条件がある点です。まずはお住まいの自治体の福祉課に相談してみることをお勧めします。
◇ ◇
月5万円の不足を補う方法は、決して一つではありません。働き続ける、住居費を削減する、資産を見直す、生活費を削減する、公的支援を活用するという5つの選択肢を組み合わせることで、より無理のない老後生活が実現できます。
大切なのは、早めに現状を把握し、自分に合った方法を選択することです。それぞれの方法にはメリットとデメリットがありますので、ご自身やご家族の状況をよく考えて、最適な組み合わせを見つけてください。老後の不安を具体的な行動に変えることで、より安心した生活を送ることができるのではないでしょうか。
【出典】
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2023年」
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)
社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士、身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極性Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。