都内で働いているAさん(45歳)は、今日が誕生日です。いつもは誕生日だからといって特別なことはしないAさんでしたが、今年は実家の両親から「今年の誕生日は実家に来ないか?」と誘われていました。この提案にAさんは「しばらく実家に帰ってないしいい機会だ」と考え、実家へ向かいます。
実家に到着すると、出迎えてくれた両親からさっそく「お誕生日おめでとう!」とお祝いされ、母が作ってくれた豪華な食事を楽しみます。その後も両親とAさんはしばらく談笑していると、父が突然立ち上がり「これ、誕生日プレゼントだから受け取ってくれ」とAさんに封筒を手渡しました。
Aさんは「ギフト券でも入ってるのかな」と考えながら封筒の中身を見ると、なんとそこには現金100万円が入っていたのです。突然のことに驚いているAさんに父は「生前贈与だから気にしないで受け取ってくれ」と言います。それを聞いたAさんは納得し、100万円を受け取るのでした。
それから1年後、再び誕生日を迎えるAさんに父から「今年も誕生日祝いをしないか?」と連絡が入ります。父からの提案を快諾したAさんは、昨年同様に実家へ向かいます。
そこでAさんは昨年と同様に、父から「誕生日プレゼントだ」と封筒を渡されました。封筒の中身は昨年と同様に100万円です。まさか2年連続でこんな大金を渡されると思っていなかったAさんは、「これも生前贈与?じゃあなんで2年に分けたの?」と両親に疑問をぶつけます。
Aさんの疑問に両親は「年間で110万円以内の贈与なら贈与税がかからないらしい」と答えます。合計で200万円を受け取ったAさんは、本当に贈与税を払わなくてもいいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに話を聞きました。
基礎控除内だから安心ではない「暦年贈与」の注意点
ーAさんは合計200万円受け取っていますが、本当に贈与税はかからないのですか?
Aさんのように、2年連続で誕生日にそれぞれ100万円を受け取った場合、計算上は別々の年の贈与になります。そのため各年で贈与された金額が110万円以内に収まっていれば、贈与税はかかりません。
ー例えば今後10年間、毎年100万円を受け取る場合でも贈与税はかからないですか?
税務署の調査は、日常的な資金のやり取り状況やその背景などを総合的に確認して課税有無を判断しているため、非課税になるケースが多いです。ですが必ず非課税になるわけではありません。
毎年ほぼ同じ時期に、ほぼ同じ金額の贈与が繰り返されているような場合、たとえ当事者の認識が「その都度のつもり」だったとしても、税務署からは一連の贈与、いわゆる定期贈与や連年贈与とみなされる可能性があります。
そのため銀行で贈与の相談を受ける際には、万が一にも課税対象にならないように対策を取る人は多いです。
そのような人がおこなう対策は、毎年同額を機械的に渡すことを避け、金額を変えたりあえて一部を申告して贈与税を納めたりするなど、贈与の実態が「その都度完結している」と分かる形を取るようにすることです。
◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ) 元銀行勤務ファイナンシャルプランナー
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行をおこなう 。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。