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全身整形で別人になることを選んだ妹と感情をごまかすことを選んだ姉 7年ぶりの再会から物語が始まる【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

例えば「二重になりたい」「鼻を高くしたい」など、見た目のコンプレックスに悩んだ経験は誰しも1度はあるでしょう。そんなルッキズムの苦しさを描いた餅田ぷりさんの漫画『二つのさよなら~一卵性双生児の妹が全身整形しました~』が注目を集めています。

物語は、7年前に失踪した一卵性双生児の妹の碧煌(サファイア)が全身整形した姿で姉である紅煌(ルビー)の前に現れたことから始まります。見た目はまったくの別人であるため、最初は本当に妹なのか信じられなかったルビーですが、免許証を見せてもらい妹だと確認できました。

再会した妹は、かつての内気な姿からは想像もできないほど背筋が伸び、自信に満ち溢れて見えました。2人は喫茶店でしばらく会話をした後、サファイアはルビーに「さようなら」と一方的に告げ、半ば強引に謎の鞄をルビーに渡して喫茶店から出ていきました。

自宅に戻ったルビーが鞄を開けると、中にはいっぱいの札束が入っていました。金額を数えてみると5000万円があることが分かり、ルビーは戸惑いを隠せない様子です。そんななか同棲している恋人のユウが仕事から帰ってきたため、ルビーはお金の入った鞄を自室に移動させるのでした。

その後、夕食中にもルビーは妹のことを考えます。たしかにルビーの容姿は地味で、学生時代にはルビーと同じく地味な顔立ちをしていたサファイアは姉妹揃って派手な見た目の女子たちにからかわれていました。しかしルビーには外見ではなく自分の内面を見て好きになってくれたユウがいることもあり、妹がなぜ整形したのかルビーには分からないでいたのです。

この疑問の答えを知る機会は、数日後に訪れます。それは大金を渡してどこかに行ってしまった妹の葬儀でした。彼女はルビーと会った数日後にビルから飛び降り自殺をしていました。

葬儀で飾られた写真は整形前のもので、それを見たルビーたち姉妹の母は「なんかアンタが死んだみたいに見えるわね」とルビーに言い放ちます。その後も「アンタまたブスになった?」「ほんと別れたクソ夫そっくりなんだから」などの暴言を浴びせられ、ルビーの心の中にしこりが生まれるのでした。

また、葬儀に来たサファイアの仕事仲間にも容姿について笑われ、妹がどんな整形をしていたのか確かめるように顔を無断で触ってくる他人の手に、ルビーは恐怖を覚えます。その後も妹の整形について、母やユウも加えて複数人で妹の整形について話が弾む中、ルビーは1人取り残されるのでした。

そして、ひとしきり整形話に盛り上がった母はルビーに「アンタも整形すれば?」と告げます。その時、ルビーは妹が学生時代に容姿についてからかわれているなかで、強い憎しみを感じていたことを理解しました。そんな憎しみから自分自身を救うために整形をしたことも理解したルビーは、最後に会いに来た時に気持ちを共感できなかったことへの後悔や怒りから声をあげて号泣するのでした。

その後ルビーは容姿について貶めてくる母に向かって「これ以上ひどいこと言うんだったらもうお母さんと会わない!」と怒りの気持ちをぶつけ、自身の容姿について「もう慣れたんで大丈夫ですよ!」と言い、認めてくれない恋人のユウに対しては「私ユウくんと結婚してあげない」と別れを告げます。

心機一転したルビーは、姉妹で学生時代に夢描いていたカフェ経営をするために、5000万円を使うことを決めました。その足取りは軽やかで「忙しくなるぞ~!」呟く姿は以前とは比べ物にならない程明るく前向きなものでした。

同作について、作者の餅田ぷりさんに話を聞きました。

姉の前に現れた生まれ変わった妹

ー7年前に失踪した碧煌が、久しぶりにお姉さんに会ったとき、この世からいなくなることを決断していたのでしょうか?

はい。自ら命を断つ決心を揺るがないものにするために自分がこの世で最も憎い顔を持つ双子の姉に会いに行きました。

また碧煌が生前一番好きだった人が姉であったのかもしれません。大好きな人に一目会いたかったという気持ちもあったと思います。

一番好きな人が一番嫌いな顔である、一番会いたい人が一番見たくない自分である、碧煌は生前そんな気持ちに苦しんでいたのかもしれません。

ー見た目をいじられることに対し、なぜお姉さんは何も言わなかったのですか?

怖かったからです。紅煌は優しくて気が弱い性格です。悪意に対してやり返すという発想がそもそもありませんでした。

また、紅煌もまた碧煌と同様、自分の見た目にコンプレックスを感じていました。ルッキズムが顕著になってくる中学時代、見た目が劣っている自分が主張できる権利などないと思っていたのでしょう。この呪いは碧煌のお葬式まで続きました。

ー最後、お姉さんの「忙しくなるぞ」にはどのような意味が込められていますか?

先ほどの質問の回答で触れた「見た目が劣ってる自分は主張してはいけないという呪い」からの解放です。

呪いがかかっていた頃の紅煌は自分の気持ちをおざなりにし、その場をやり過ごすという生き方を選択してきました。これが、ルッキズム社会で見た目が劣って生まれた紅煌の生存戦略だったのです。

その中で妹のお葬式がきっかけで自らを振り返り、自分はこの状況が「憎い」と感じていることに気づきました。本当の感情に気づいたことで、やり過ごすという選択以外の発想が生まれるようになりました。

一方で「整形しルッキズム社会に迎合する」という生存戦略をとった妹は自殺してしまった事実もあります。そこで紅煌はやり過ごすでも迎合するでもない「主張する」という選択をします。

最後の台詞は、主張することを選んだ人へ希望を込めました。私は自らの意思で忙しい未来を選択できることは尊いことだと考えているからです。

<餅田ぷりさん関連情報>
▽新連載作品「なんぼの食卓」3/10から秋田書店WebサイトSouffleにて開始
https://souffle.life/manga/nanbo-no-syokutaku/nanbo001-20260310/
▽pixiv
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