賃料上昇が続くなか、生活費を抑える手法として誰もが知るブランド駅を避けたり、同路線の数駅ずらしたりする「ずらし駅」戦略が注目されています。株式会社LIFULL(東京都千代田区)が運営する不動産・住宅情報サービス『LIFULL HOME'S』が実施した調査によると、いま注目が集まっている「ずらし駅」は「池袋」周辺や「赤羽」周辺など4つの駅が挙げられました。
調査は、2025年1月~11月の期間において、同サービスに掲載された賃貸物件への問合せ数を駅別に集計し、前年同期比110%以上の駅かつ家賃相場 (1LDK) が基準駅より低い駅を分析したといいます。
なお、家賃相場は、駅徒歩10分以内賃貸物件の平均賃料(管理費・駐車場代などを除く)を軸に同サービスの過去データを基にした独自のロジックで算出しています。(※2025年12月26日時点)
同サービスが毎月発表している「LIFULL HOME'Sマーケットレポート 2025年11月(東京/賃料動向)」によると、東京23区の掲載賃料はファミリー・シングル向きどちらも上昇傾向です。ファミリー向きは「24万4579円」(前年同月比114.5%)、シングル向きは「11万9139円」(前年同月比116.1%)となり、どちらも過去最高となりました。
一方で、ユーザーが実際に問合せをした物件の賃料「反響賃料」との差は広がっており、物価上昇や実質賃金の停滞を背景に、住まいの予算を増やすことが難しい状況がうかがえます。
そうしたなか、少しでも生活費を抑えるため、生活利便性・交通利便性の高いターミナル駅などから、利便性は劣るものの、比較的賃料を抑えられる1~3駅離れた「ずらし駅」を検討する人が増えてきています。
注目のずらし駅(1)「池袋」周辺
9路線が乗り入れる「池袋」では、問合せ数の前年比が102.3%にとどまる一方、東武東上線「大山」、JR埼京線「十条」、西武池袋線「東長崎」、東京メトロ副都心線「千川」の4駅は、どの駅も急行などの速達列車が停車しないものの、「池袋」まで約5分程度でアクセスできるという共通点があり、問合せ数は前年比110%を超えました。
また、家賃相場(1LDK)では、「池袋」の21.1万円に対して、「十条」が15.8万円(-5.3万円)、「大山」が14.9万円(-6.2万円)、「千川」が14.8万円(-6.3万円)、「東長崎」が14.3万円(-6.8万円)と、2~3駅ずらすだけで、5~6万円ほど生活費を抑えることができます。
注目のずらし駅(2)「赤羽」周辺
JR京浜東北線・埼京線・湘南新宿ラインなど複数路線が乗り入れ、「池袋・新宿」方面、「東京・上野」方面のどちらにも乗り換えなしでアクセスできる北のターミナル駅「赤羽」では、問合せ数が89.1%と前年割れしている一方、隣駅のJR埼京線「北赤羽」(前年比121.4%)、JR京浜東北線・根岸線「川口」(同110.7%)で大きく問合せ数を伸ばしています。
家賃相場(1LDK)を見ると、「赤羽」の14.1万円に対して、「北赤羽」が11.1万円(-3万円)、「川口」が11.8万円(-2.3万円)となっており、隣駅にずらすだけでも、2~3万円ほど生活費を抑えることができます。
注目のずらし駅(3)「町田」周辺
小田急小田原線・JR横浜線が利用でき、「新宿」「横浜」に乗り換えなしでアクセス可能な郊外の拠点駅「町田」でも「ずらし駅」の動きが見られました。同駅の問合せ数は、前年比102.5%にとどまる一方、隣駅の「古淵」(前年比127.4%)、「成瀬」(同121.3%)で大きく問合せ数を伸ばしています。東京都下(23区を除く東京都)のファミリー向き物件の掲載賃料が過去最高を更新するなか、「ずらし駅」は郊外エリアで広がってきていると言えそうです。
また、家賃相場(1LDK)では、「町田」の12.0万円に対して、「古淵」が10.6万円(-1.4万円)、「成瀬」が9.2万円(-2.8万円)となっており、隣駅にずらすだけで、1~2万円ほど生活費を抑えることができます。
注目のずらし駅(4)「大宮」周辺
JR各線や新幹線が集積し、「東京」まで約30分と首都圏有数のターミナル駅である「大宮」周辺でも、「ずらし駅」の動きが顕著に見られます。「大宮」の問合せ数は前年比で103.8%にとどまる一方、JR埼京線の「指扇」「西大宮」「与野本町」「南与野」で110%以上と、問合せ数を伸ばしています。
そのほか、「浦和」との間にあるJR京浜東北・根岸線の3駅「さいたま新都心」「与野」「北浦和」でも問合せ数を伸ばしており、東京都に比べ賃料が比較的安い埼玉県でも、主要な駅の周辺では「ずらし駅」の動きがあることが分かりました。
家賃相場(1LDK)を見ると、「大宮」の14.0万円に対して、「指扇」が9.4万円(-4.6万円)、「西大宮」が9.2万円(-4.8万円)、「与野本町」が11.7万円(-2.3万円)、「南与野」が10.2万円(-3.8万円)、「さいたま新都心」が12.8万円(-1.2万円)、「与野」が11.2万円(-2.8万円)、「北浦和」が13.8万円(-0.2万円)となっており、埼玉県でも数駅ずらして生活費を抑える動きが出てきています。
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こうした結果について、調査を実施した同サービスは、「2026年も2025年までの賃料動向が継続し、消費者物価指数の上昇や都市圏への人口流入動向には変化がないことから、主に交通利便性が良好なエリアでの賃料相場が上昇していくと見込まれる」と分析。
そのうえで、「賃料を維持もしくは下げて生活するためには、(1)より都心から&駅から離れる、(2)より築年数の古い物件を選ぶ、(3)より狭小な部屋を選択する、などの方法しかありませんが、交通・生活利便性を大きく落とすことなく賃料をやや安価にすることができる『ずらし駅』は、これからも効果の高い生活防衛手段として活用されるものと考えられます」とコメントしています。