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運転中、信号が2つに見える…スマホゲームをやめられない大学生を襲った異変 「スマホ斜視」が急増している【眼科医が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

大学生のAさんは、朝から深夜までスマホゲームに没頭しています。そのためか「最近ちょっと目が疲れるな」「視力が落ちたかな」と感じることはありました。しかし眼科に行くことはなく、市販の目薬をさして気にせず生活していました。

しかしある日、車の運転中に「あれ?赤信号が2つある?」と感じ、恐怖を覚えます。慌てて目を凝らしましたが、景色が二重にみえる状態は治りません。鏡を見ると、なんと自分の片方の黒目が明らかに内側に寄っていたのです。

実は近年、スマホの使いすぎによる『スマホ斜視(急性内斜視)』患者が若者を中心に急増しています。なぜこのような状態に陥ったのでしょうか。また、防ぐ手立てはあるのでしょうか。さいたま市大宮のくらかず眼科院長・倉員敏明さんに話を聞きました。

動画やSNSで長時間目に過剰な負荷がかかり、目の筋肉(内直筋)が固まってしまう

―なぜスマホを見続けると、Aさんのように黒目が内側に寄ってしまう(斜視になる)のでしょうか

「スマホ斜視」は、医学的には「急性後天性内斜視(きゅうせいこうてんせいないしゃし)」などと呼ばれます。簡単にいうと、黒目が内側(鼻側)に寄ったまま戻らなくなってしまう状態です。

昔は内斜視といえば遠視を持つ子どもに多かったのですが、今は大人に急増しています。その最大の犯人が、スマートフォンです。

スマホは、本やパソコンよりも圧倒的に近い距離で操作しがちです。しかも、動画やSNSで長時間目に過剰な負荷がかかり、目の筋肉(内直筋)が固まってしまうのです。その結果、脳が「目は寄っているのが普通の状態」だと勘違いし始め、片方の目だけ視線がズレてしまうのです。

―実際に眼科の現場でも、若者の斜視の患者さんは増えているように感じますか

手術が必要なレベルの内斜視は、当院は専門病院ではないのであまり見かけません。しかし若干内斜視気味になり、目の調節過多によって老眼化している若者をよく見ます。

―スマホ斜視の初期症状や、危険なサインがあれば教えてください

もし「ふと遠くを見たとき、景色やテレビの字幕が二重に見える(複視)」や「片目をつぶった方が、物を見るのが楽だと感じる」、「鏡を見ると、片方の黒目が内側に寄っている気がする」などの症状に心当たりがあれば、眼科受診のサインです。とくに「物が二重に見える」症状は、脳がSOSを出している危険信号です。

―もしスマホ斜視になってしまった場合、もう治らないのでしょうか。それとも手術などで治る可能性はありますか

軽度〜中等度だと点眼や補正などで治る可能性がありますが、重度になると元に戻すのが難しくなります。

初期段階であれば、「スマホの使用を控える」「遠くを見る時間を増やす」だけで筋肉の緊張が解け、治ることがあります。目の緊張をほぐす調節麻痺薬(ミドリンMなど)を点眼することもあります。

中等度であれば、目が寄ってしまっている分、光の入り方をレンズで屈折させて補正する「プリズムメガネ」を使用することで矯正可能です。

メガネでも矯正できない場合や、角度が大きい場合は、目の筋肉を調整する手術を行います。斜視手術といって、筋肉の位置を少しずらし目の位置を真ん中に戻します。局所麻酔で日帰り〜数日の入院で済むことが多いです。

斜視の症状は、進行するにつれ目の内直筋の肥大・拘縮が始まり元に戻らなくなります。脳の感覚も、最初は「二重に見えて気持ち悪い」と感じていたズレた状態を、普通の状態として処理し始めます。

脳が両目で正しく見る機能(両眼視機能)を捨ててしまうと、手術で眼球の位置だけ治しても、機能的に元に戻るのが難しくなるので注意が必要です。

―スマホ斜視にならないために、日頃から気をつけるべき予防策を教えてください

これらの「目を守る3つの習慣」を心がけましょう。

1つめが、30cmルールです。スマホは目から30cm以上、できれば40cm離して持ちましょう。2つめが、20-20-20の法則の導入です。これは、1990年代初頭にアメリカの検眼医であるジェフリー・アンシェル博士(Dr. Jeffrey Anshel)が、コンピューター作業をする患者さんのために考案したもので、20分おきに20フィート(約6m)先を20秒間眺めるというものです。これで目の筋肉のロックが解除されます。

最後は、寝る前スマホの禁止です。暗い部屋でのスマホは、通常よりも瞳孔が開くためピント合わせの負担が増大し、リスクが高まります。眼科に行く前に、あるいは治療中にもこれらを心がけてほしいと思っています。

◆倉員敏明(くらかず・としあき)
さいたま市大宮・医療法人創光会くらかず眼科院長。愛媛大学医学部卒業。手術特化の眼科として、複数の眼科医によるチーム医療体制で2,200名以上の手術を行う(2025年)。手術器具・手術方法の開発や眼内レンズの研究にも取り組んでいる。
▽医療法人創光会くらかず眼科ホームページ
https://kurakazu.org

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