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上司の「連帯責任だ」に追い詰められうつ病で休職 「誰にも頼れない」と思い込んだ34歳女性、支援につながった“医師の一言”【社会福祉士が解説】

もくもくライターズ もくもくライターズ

「結局、自分が弱かっただけなんじゃないか」

会社の上司のパワハラが原因でうつ病を発症した土屋ゆみさん(34歳・仮名)は休職に至るまでの日々をそう振り返ります。

同僚の業務上のミスを「連帯責任だ」と言い、自分や他の社員を叱責する上司の理不尽な言葉が、頭の中で何度も繰り返されました。眠れない夜が続き、朝になると体が鉛のように重くなる。それでも、「社会人なんだから」「これくらいで弱音を吐くなんて」と、自分を責める気持ちは消えませんでした。

誰かに相談しようと思っても、「甘えていると思われたらどうしよう」「こんな状態を知られたくない」という不安が先に立つ日々。心身ともに限界がきて、うつ病を発症。休職に入ったあとも、初めは「自分でなんとかしなきゃ」と思い続けていました。

人に迷惑をかけてはいけない、自分のことは自分で何とかするものだ——そう教えられて育ってきた土屋さんは、助けを求めること自体を、“弱さ”のように感じていました。

しかし、そんな土屋さんは、医師の何気ない一言をきっかけに、少しずつ変わり始めました。ほんの小さなお願いをすることができるようになり、そこから「助けを求める」ことができるようになったのです。

休職中の孤独感と復職への焦りから、心が休まらなかった

休職中の生活は、想像以上に孤独だったといいます。

会社から離れたことで、日常的に人と話す機会が激減し、社会から切り離されたような感覚に襲われました。

復職について考えようにも、「また同じ職場に戻って、ちゃんと仕事ができるのか」「働けない自分に価値はあるのか」と不安が膨らむばかり。家族や友人に心配をかけたくないという思いもあり、体調が悪いことをうまく説明できませんでした。

幼い頃から「自分のことは自分でしなさい」と教わってきたこともあり、家族にさえも自分の状態を話したり、弱音を吐いたりすることができない状態でした。

病院には通っていたものの、診察は短時間。日常の細かな困りごとや、将来への不安を吐き出す場はありませんでした。気づけば、「誰にも頼れない」という思い込みで、どんどん土屋さんは自分を追い詰めてしまったのです。

主治医の一言をきっかけに支援を受けられるようになった

転機は、主治医の一言だったといいます。

ある日の診察で、自分が生活面でも苦労していることを打ち明けた時に、主治医が何気ない一言を伝えてくれました。

「治療だけじゃなく、生活の相談や支援も受けてもいいんですよ」

いつも診察の短い主治医にとっては、本当に何気ない一言だったかもしれません。けれども、土屋さんは、その言葉を聞いた瞬間、頭の中のモヤモヤの霧が晴れたような感覚になったといいます。
自分の悩みは、相談するほどのことではないと思っていたからです。

けれど、医療の専門家である医師からそう言われ、ようやく「頼ってもいいのかもしれない」と思えるようになったようです。

半信半疑のまま、医師に紹介された精神保健福祉センターに電話をかけました。

声が震え、「こんなことで相談していいのか」と何度も言い訳をしながら話す土屋さんに、保健師だという担当者は静かにこう言ったといいます。

「一人で抱えなくていいですよ」

その一言で、張り詰めていたものが崩れ、気づけば涙が止まらなくなっていたそうです。

最初の一歩は、驚くほど小さな「頼みごと」だった

頼ることが元々苦手な人の場合、最初の一歩の頼みごとは、ごくごく小さく、ご本人の負担感が少ないものから始めてみましょう。

土屋さんが問い合わせた地域の相談員も「まずは身近な人に、ごく小さな頼みごとをする練習からチャレンジしてみましょう」とアドバイスしてくれました。最初は土屋さんも戸惑いましたが、公的支援につながったことで、『誰に・どんなふうに頼めばいいか』が少しずつ自分の中で整理されていきました。

土屋さんがチャレンジした小さな頼みごととは、一体何だったのでしょうか。

◇荷物の受け取りを頼む

最初の一歩は、本当に些細なお願いだったようです。

通院の間に届く荷物を代わりに受け取ってもらえないか、隣町に住む弟に聞いただけでした。

声に出すまで、心臓がドキドキしていたようですが、返ってきたのは、「いいよ、気にしないで」というあっさりした言葉でした。拍子抜けすると同時に、「あれ、そっか、頼ってもよかったんだと思った」と、土屋さんは言います。

◇買い出しなどを手伝ってもらう

次に挑戦したのは、友人への協力依頼でした。

「週末に買い出しに行くから、荷物を持つのを手伝ってほしい」という要望は、なんとなく相手に無理やりお願いしているように思えて気が引ける感覚があったと、土屋さんは語ります。

快諾してくれた友人は、帰り際に「私にとってもいいリフレッシュになったし、量の多いものをシェアできるのもいいね。これからもときどき一緒に買い物に行こうよ」と言ってくれました。その言葉で、お願いする側とされる側ではなく「同じ立場」で話せている感覚が生まれ、頼りやすくなったそうです。

小さな一歩でいいから、誰かに手を伸ばしてみてほしい

人に頼ることは弱い証ではなく、社会生活を円滑に過ごせている証拠です。

土屋さんは「小さな頼みごとを重ねるにつれて、だんだん生きやすくなった」と語ります。家族や友人に少しずつ頼れるようになったことで、心身も安定しはじめたため、パワハラを受けた職場には復職をせず、最近は転職を視野に入れて就職活動を始めたようです。

「頼ることは、甘えでも弱さでもない。それは、自分を守り、前に進むための力なのだと、ようやく気づきました。私のように苦しんだ経験のある人々には、最初は本当に小さな一歩でいいから、誰かに手を伸ばしてみてほしい」

「誰にも頼れない」と思っていた“私”が、今はそう思っている。だからあなたにも、そっと伝えたい。一人で抱え込まなくていい。誰かに頼っていいのだ、と。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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