都内のアパートで一人暮らしをするAさんは、ここ数日、奇妙な出来事に悩まされていました。決まって深夜2時過ぎ、寝室の窓の外から「ガサ、ゴソ」とビニールが擦れる乾いた音が響くのです。
猫かカラスの仕業だろうと自分に言い聞かせていましたが、気になって眠れなかったAさんは、意を決しカーテンの隙間から数センチだけ外を覗き見ました。そこで目にしたのは、スーツ姿の生真面目そうな中年男性が、Aさんが数時間前に出したゴミ袋の結び目を丁寧に解いている光景でした。
その姿を見たAさんは、驚いて声を失います。男は立ち去りましたが、Aさんは震えが止まりません。しかし1度捨てたゴミに所有権はあるのか、そもそも誰に相談すべきなのか分からず、膝を抱えることしかできませんでした。
他人のゴミをあさったり持ち去ったりする行為は、法的にどのような罪になるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
捨てたものの所有権は自治体へ
ーゴミ袋を開けたり持ち去ったりする行為は、法的にどのような罪になりますか?
主に以下の3つの法的問題に抵触する可能性があります。
まずは、自治体の条例違反です。多くの自治体では条例でゴミの持ち去りを禁止しており、違反者には罰金刑などが科されます。
次に、刑法上の「窃盗罪」に問われる可能性も十分にあります。「ゴミ」であっても、ゴミ集積所に出された時点で、その所有権は「出した人」から「自治体(市区町村)」に移転すると解釈されます。したがって、勝手に持ち去る行為は自治体の所有権を侵害する「窃盗罪」に問われる可能性があります。
また、特定の個人の情報を得る目的でゴミを漁っていたのであれば「ストーカー規制法違反」とみなされるでしょう。さらに、敷地内に無断で入っていれば「住居侵入罪」も成立します。
ー「捨てたもの(無主物)」であっても、持ち去ることは違法なのですか?
捨てたからといって誰のものでもなくなるわけではありません。前述のとおり、行政回収の場に出された時点で、「自治体の管理下にある所有物」とみなされます。
過去には、家庭ごみ集積所からアルミ缶などの資源ごみを大量に持ち去った男が、自治体からの禁止命令を無視して繰り返したため、窃盗の容疑で逮捕された事例があります。
また、好意を寄せた女性のゴミを漁り、住所や電話番号、生活パターンを把握していた男がストーカー規制法違反で逮捕されたケースもあります。
ーAさんのように現場を目撃した場合、警察に通報しても良いのでしょうか?
迷わずすぐに警察に通報してください。
「被害届が出せるか分からない」と躊躇する必要はありません。まずは「不審者がいる」「ゴミが荒らされている」という事実を通報することが重要です。
警察に相談することで、パトロールの強化を依頼できたり、防犯カメラの映像から人物を特定できる可能性があります。ご自身の身を守るためにも、決して一人で抱え込まず、専門機関へ助けを求めてください。
◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。