楽しい場の雰囲気を、突如やってきた人に乱された経験がある人も多いのではないでしょうか。ヒロ・コトブキさんの作品『さっきまでたのしかったのに..』では、飲み会に遅れてやってきた人物の様子が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約4,900ものいいねが寄せられました。
男女が集まる大盛りあがりの宴会。そこにテンガロンハットにサングラスをかけた人物が「おっまったっせ~」と言いながら現れます。彼の名前はタキ、男性陣の友人として飲み会に誘われました。
男性陣はタキにうながされ、タキの紹介をさせられる羽目となります。タキは「一時帰国っス~」と言いますが、実際は隣町からやってきたとのこと。女性陣は反応に困り果てた様子で、とりあえずタキに合わせて質問を投げかけます。
タキは「来て早々質問多すぎ~みんな俺に興味津々じゃん」と喜ぶものの、女性陣は「気ぃつかってんの!」と内心憤慨している様子です。ひとまず友人に促され自分の席に座ったタキでしたが、いつの間にか会話の輪に置いていかれていました。
するとタキは中央に座り、「みんな均等に話を振れるし」と自分主導で話を回そうとしだします。「質問…聞くよ?」と言うタキに、女性陣は渋々仕事の話題を振りました。タキの職業はお家のメイクアップアーティスト…ではなく塗装屋さんだそう。
「お店一件塗装するのにどのぐらいかかるか」との質問には、タキは謎の造語と電卓打ちの真似をしたのちに「なに塗るかによるね…」と小声で答えます。
それからタキは店員に「カルーア、ジョッキで出せる?俺なかなか酔えねえタイプだから」と格好つけながら話すため、女性陣は「恥ずいからやめてくれ」と腹を立て続けていました。
女性陣の様子を悟った男性陣はべつの話題を振りますが、タキは自分以外で盛り上がることを嫌がり関係性の柵を飛び越えて話しかけてきます。そんなタキを尻目にジョッキを飲む男性友人に、タキは「いや…フツーさすがにカルーア待たん?」と、タキに“普通”を語られたところで物語は幕を閉じます。
同作に対してSNS上では、「飲み会とかで自分以外が注目されると嫌なヤツいるよね」「しゃべり方がリアルすぎるw」などの声が寄せられています。そこで、作者のヒロ・コトブキさんに話を聞きました。
タキはとてもピュアな人物なのかもしれない
―同作を描こうと考えたきっかけはありますか
これの少し前に『全部やる人』という漫画を描いていました。そこではお店と目の前の彼女に対してだけの『やってる』行為にしぼっていたので、『飲み会だったらこういう行動もとる』は出しきれないまま心の中にたまっていました。この漫画によってそのすべてを出し切れたのではないかと思っています。
―タキというキャラクターを描くにあたって考えていたことを教えてください
結局僕の中に(あるいはみなさんの中に)タキはいるのだと思います。振り返るだけで赤面してしまうような『やっちゃった』言動のひとつひとつを修正しながら、消しながら生きていくのが人生だとしたら、タキはとてもピュアなのかも知れません。
すべての黒歴史は本人が黒歴史と思わない限り、向こうが透けて見えるほどクリアな世界のはずですから。描きながら僕は「タキ、僕はもう君にはなれないんだよ」と裏切るような寂しい気持ちになりました。
―作品にはさまざまな反響が寄せられていました
コメントのなかに「その心のツッコミを全部声に出して言ってやるのがやさしさだ」という意味のものもありましたが、この先どこかで第二、第三のタキを見つけても、やはり僕は言わないでしょう。
だけど彼らの誘いにはのるし、僕もまた彼らを誘います。誰もその美しさを分かっていなくても。それくらいに僕はタキが好きです。
<ヒロ・コトブキさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/kotobuki_hiroju