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朝は徘徊、夜は不眠の要介護2の母…「辞めるしかない」と悩んだ45歳IT社員、デイ週3回と週2回朝夜の訪問介護+在宅勤務で立て直した日常【社会福祉士解説】

もくもくライターズ もくもくライターズ

東京都内のIT企業に勤務する田中さん(45歳・仮名)は、1年前から要介護2の認定を受けた認知症の母親(75歳)の在宅介護を始めました。認知症の症状である朝方の徘徊や夜間の不眠により、当初は自身も睡眠不足で業務に支障が出る日々でした。「このままでは仕事を辞めるしかない……」と追い詰められていた田中さんでしたが、介護保険サービスとリモートワークを組み合わせることで、仕事と両立しながら母親の介護を続けています。

田中さんと同じような悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。介護保険サービスも、何を利用すれば良いのか、どこで相談が出来るのか、少し難しく感じてしまいますよね。
田中さんのタイムスケジュールから、両立のためのテクニックを見ていきましょう。

介護離職の現実と2025年問題

現在、日本では年間約10万人以上が介護を理由に離職しています。厚生労働省による2022(令和4) 年就業構造基本調査によると、1年間で介護離職した人は10万6000人にのぼり、そのうち女性が約77%を占めています。また、介護をしながら働いている人の7割が40代から50代という、働き盛りの世代です。

さらに2025年には、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、国民の4人に1人が後期高齢者となる「2025年問題」に直面します。このまま何ら対策を講じなければ、介護離職者はますます増えていくと考えられています。したがって、仕事と介護の両立は、多くの人にとって避けられない課題となりつつあるのです。

田中さんの1日のタイムスケジュール

それでは、田中さんの平日の具体的なスケジュールを見ていきましょう。

▽朝
5時30分に起床。母親の徘徊対策のために早起きし、身支度や朝食の準備を始めます。6時には母親を起こし、朝食の介助を行います。週2回、火曜・木曜の朝7時には、訪問介護ヘルパーに母親の身支度や朝食介助、服薬介助を依頼しています。こうすることで、田中さんは朝の業務開始準備に充てることができます。

▽日中
7時半ごろから、自宅でリモートワークを開始します。月曜・水曜・金曜は、朝9時に送迎者が到着し、母親はデイサービスに向かいます。施設では入浴介助やレクリエーション、機能訓練などのサービスを受けられるため、田中さんは安心して仕事に集中できます。

▽夕方~夜
母親の帰宅は16時ごろ。15分ほど母親と会話をして施設での様子を聞き取り、連絡帳を確認して体調や食事の状況を把握します。16時30分頃には勤務を終了し、夕食の準備を始めます。調理時間を短縮するため、週末に作り置きをしたり、宅配弁当サービスも併用したりしています。18時ごろから、母親の介助をしつつ一緒にゆっくりと夕食をとります。この時間は、母親とのコミュニケーションを大切にする貴重な時間でもあります。

デイサービスに行かない火曜・木曜の夕方18時30分からは、訪問介護ヘルパーが母の夕食介助と入浴介助、就寝準備を行います。ちなみに、1日のうち朝と夜の2回ヘルパーを利用する火曜・木曜は、サービス提供の間隔を2時間以上空けることで、それぞれ別のサービスとして介護保険が適用されます。
そうして母親の就寝準備が完了するのが20時。徘徊防止のため、玄関にセンサーを設置し、夜間の見守りも行っています。また、部屋の照明を調整して、安心して眠れる環境を整えます。

その後、田中さんは自身の時間を取り、翌朝のために22時頃には就寝する、というのが、1日の流れです。

介護費用の内訳

田中さんが利用している介護保険サービスの具体的な費用をご紹介します。介護保険サービスを利用するためには、地域包括支援センターに相談し、要介護認定を申請しましょう。認定後はケアマネジャーがケアプランを作成します(令和7年時点で費用無料)。要介護2の支給限度額は月額19万7050円で、自己負担は原則1割です。

▽デイサービス(通所介護)
週3回、通常規模型の施設で利用時間は7時間から8時間未満です。1回あたりの基本料金は約718円(要介護2の場合)で、これに入浴介助や個別機能訓練加算、食費などを加えると、1回あたりの総費用は約1800円となり、月12回の利用で月額約2万1600円となります。

▽訪問介護(ホームヘルプ)
 身体介護30分以上1時間未満の場合、基本料金は1回あたり約387円ですが、田中さんの場合は早朝(6時〜8時)と夜間(18時〜22時)の時間帯に利用するため、早朝・夜間割増料金として基本料金の25%が加算されます。したがって、1回あたりの費用は約484円です。火曜・木曜の朝と夜、月16回の利用で、月額は約7744円となります。

▽介護用品のレンタル
徘徊感知センサーや介護用ベッドを利用しており、月額約5000円です。これらは介護保険が適用されるため、自己負担は1割の約500円です。

▽その他の費用
おむつ代が月約8000円、配食サービスが週3回で月約1万2000円かかります。これらは介護保険適用外のため全額自己負担です。ただし、おむつ代は医療費控除の対象となったり、地方自治体によっては紙おむつ支給事業として助成されたりする場合もあります。

このように計算すると、田中さんの月額介護費用の総額は、合計約4万9844円となります。これに突発的な医療費や介護用品の購入費などを含めると、月額6万円から7万円程度が実際の支出となっています。

リモートワークを活用した両立テクニック

田中さんが仕事と介護を両立できている要因のひとつに、リモートワークの活用があります。具体的な工夫の例をいくつかご紹介します。

▽業務の見える化
リモートワークでは成果が見えにくいという懸念があるため、毎日の業務報告や進捗状況の共有を行っているほか、プロジェクト管理ツールなども活用しています。

▽デジタルツールの活用
オンライン会議システムやチャットツールを使いこなすことで、オフィスにいる時と変わらないコミュニケーションが可能になります。また、介護記録アプリを使って母親の状態を管理し、ケアマネジャーや医療関係者との情報共有も円滑に行っています。

メンタルヘルスを保つための工夫

介護と仕事の両立は、身体的にも精神的にも大きな負担となります。

田中さんは、同じように介護をしている人たちとのオンラインコミュニティに参加し、悩みや工夫を共有しています。一人で抱え込まずに、同じ立場の人と話すことで、精神的な支えを得ることができました。そして、必要に応じて地域包括支援センターの相談窓口や、企業が提供する従業員支援プログラム(EAP)も活用しています。

介護離職を防ぐための支援制度

仕事と介護を両立するためには、法律で定められた支援制度を積極的に活用することが重要です。ここでは、主な制度をご紹介します。

▽介護休業制度
育児・介護休業法に基づき、要介護状態の家族を介護するために最長93日間の休業を取得できる制度です。対象家族1人につき3回まで分割して取得できます。また、休業中は雇用保険から介護休業給付金が支給され、休業開始前の給与の67%が支給されます。ただし、給付額には上限があり、令和6年度は月額約31万円が上限となっています。

▽介護休暇制度
要介護状態の家族の通院付き添いや介護サービスの手続きなどのために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで取得できる制度です。時間単位での取得も可能なため、柔軟に利用できます。

▽残業等の制限
要介護状態の家族を介護する労働者は、時間外労働や深夜業を制限する請求ができます。

▽短時間勤務制度
企業によって設けられている制度で、介護のために勤務時間を短縮できる制度です。多くの企業では、1日2時間程度の短縮が可能となっています。

これらの制度は、企業規模や雇用形態によって適用条件が異なる場合があるため、自分の職場の就業規則を確認し、人事部門に相談することが大切です。

在宅介護と仕事の両立は可能

介護は長期戦です。したがって、自分の健康とキャリアを守りながら、持続可能な介護体制を構築することが大切です。また、職場や家族、地域の支援を得ながら、無理のない範囲で介護を続けることが、結果的に要介護者にとっても良い環境につながります。

「仕事か介護か」という二択だけを考えるのではなく、自分に合った両立の形を見つけていきましょう。まずはお近くの地域包括支援センターや職場の人事部門に相談することから始めてみてください。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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