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プレス機に挟まれ重傷の従業員 同僚が明かした安全装置の故障 会社に損害賠償請求できますか?【社会保険労務士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

金属製品製造業のAさん(54歳・男性)は、工場でプレス機を使った加工作業に従事していました。夜勤の際にAさんが金属のプレートをプレス機にセットしたところ、位置がズレていたため調整しようと右腕をプレス機の中へいれました。そのとき停止しているはずのプレス機が突然作動し、Aさんは右腕を挟まれてしまいます。声を上げて倒れ込んだAさんに気づいた同僚2人が、すぐに駆け寄りプレス機を停止、Aさんを救急搬送しました。

Aさんは医師から、右手の指は粉砕骨折しており、手首も骨折しているためリハビリをしてもどこまで機能が戻るか分からないと診断されました。Aさんは利き腕が使えなくなり、今後の仕事への不安に夜も眠れなかったといいます。

さらに、入院中に見舞いに訪れた同僚からプレス機の光線式安全装置が故障していたことを知りました。会社からは何の説明もなかったため、怒りを感じたAさんは損害賠償請求したいと考えています。

このような場合、Aさんは損害賠償を請求できるのでしょうか。労災保険の補償や会社からの損害賠償の可能性について、社会保険労務士の小島朋子さんに話を聞きました。

予想外の事故による労災補償と損害賠償の可能性は

ーAさんはどのような労災補償が受けられるのでしょうか?

Aさんは、勤務時間中に事業所内にある機械で、作業中に発生した事故によるけがのため、療養補償等給付(医療費)として治療費や入院費などの医療費は原則自己負担なしで受けられます。

勤務できない期間は、休業補償等給付が休業4日目から支給されます。支給される金額は、給付基礎日額の60%×休業日数分となります。

この休業補償に加えて、休業特別支給金が支給されます。

休業特別支給金は、労災被害者の社会復帰を促進するための特別な支給金であり、給付基礎日額の20%に相当する額が補償されます。

また、業務災害の場合、待機3日間については、労働基準法76条1項において「労働者が業務上の疾病の療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中、平均賃金の100分の60の休業補償を行わなければならない」と規定しています。

そのためAさんの場合、待機期間の3日間は、事業主が平均賃金の60%を休業補償することになります。

ーAさんのように長期的なリハビリや後遺症が残った場合は、どのような補償がありますか?

療養開始後1年6カ月経過しても治癒していない時は傷病補償等年金、傷病が治癒(症状固定)した場合は障害補償等給付が支給されます。

ーAさんは会社に損害賠償請求できるのでしょうか。

はい、労災保険からの給付とは別に、会社に対して慰謝料などを含む損害賠償を請求できる場合があります。

たとえばプレス機による事故の場合、労働安全衛生法に基づく企業の安全配慮義務が適切に果たされているかどうかが重要なポイントとなります。会社側には「労働災害を起こす可能性を事前に発見し対策すること」が義務とされているためです。

プレス機の安全装置が故障していたことによる事故は、定期的な整備点検がおこなわれていた場合、防止できた可能性が高く、安全配慮義務を怠っていたと考えられます。

そのため、「労働安全衛生法第3条(事業者の責務)」「同法第131条(機械等の安全措置)」「自動プレス機に関する厚生労働省通達(基発第0218号、基発第519号)」など、いくつかの法令や通達に基づく措置が講じられていたかが調査されます。

これらの義務が適切に履行されていなかった場合、会社の過失があるとされ損害賠償責任を問われる可能性があります。

◆小島朋子(こじま・ともこ)社会保険労務士/社会保険労務士事務所ホライズン代表 千葉県を拠点に活動する社会保険労務士です。障害年金の代理請求を中心に、法人向けには労務に関する各種ご相談、給与計算業務や給与ソフトの導入・設定確認を承っております。会社と人との良好な関係を築くためのサポートをいたします。

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