85歳の「日本人最高齢現役女性シンガードラマー」の女性「ChaBaBa(チャババ)」こと倉田和加子さん(福岡市在住)。72歳でドラムを始め、80歳のときに作ったオリジナル曲がYouTubeでブレイク。メディアからも注目を集めるようになった。しかし、昨年11月、それまで健康だった体を病が襲う。いまは闘病生活を乗り越え、体力も回復。「来年は完全復活を目指したい」と話す。「年齢がいくつになっても、やればできるということを伝えたい」というChaBaBaさんの活動について2回にわたり紹介する。今回は(下)。(上)からの続き。
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昨年(2024年)11月半ば、ChaBaBaさんが「青天の霹靂」と呼ぶ出来事があった。足元がふらつき、めまいや貧血の症状があるため、病院で詳しく調べてもらったところ、ステージ3の大腸がんが見つかり、がん宣告を受けたのだ。
「ずっと健康で生きてきたから、すごいショックでしたよ。でも同時に、絶対、病気になんか負けない。立ち向かっていこうとも思いました」
今年(25年)1月、6時間20分におよぶ手術を受けた。一部が転移していたため抗がん剤治療が始まり、一時は「すべてにおいてやる気がなくなった」という状態に。その後、胆嚢が炎症を起こして胆嚢結石症となり、5月、9月と、1年で3度も手術を受けた。
がんの手術後、子どもたちの前でドラムを披露する機会があったが、「力が入らず叩けなかった。こんなに体力が弱っているのかと愕然とした」という。
治療は無事に終わったが、元気な時と比べ、体重は10キロほど減った。「爪が波打ってマニキュアもつけられず真っ黒になったのよ」。現在は、歩く時にふらつくことはあるものの体力は回復。以前と同じようにドラムも叩けるようになった。
「人っていつ何があるかわからないなって。病気になるときはなるし、死ぬ時は死ぬんだなって思いましたね。口には出さないけど、相当弱気だったんですよ。再発するかもしれないという不安は常にありますね。でも、弱気になってしまったら病気に負けたことになりますからね」
しかし、病気をしたからこそ気づけたこともあった。「やはりまだまだドラムをやり続けたいと改めて思いました。1曲完成させるのは本当に大変ですけど、達成したらよかろうね、楽しかろうねと、いつもそう思い描きながらやっているんですよね」
11月下旬、福岡市中央区の練習場。(上)の冒頭で紹介した12月6日の横浜でのイベントに向けて、ヨネト先生の指導のもと、猛練習するChaBaBaさんの姿があった。
演奏予定のレッド・ツェッペリンの「天国への階段」の後半部分の一節で、自分がどうしても納得できないところがあるといい、その部分を集中的に繰り返した。「天国への階段」は「タイトルが私にぴったり(笑)」といい、大好きな曲のひとつだ。
「ドンタドツタドン タドツタドンタ」と口づさみながら、ChaBaBaさんはリズムを体に染み込ませる。「いま左手が間違ったね」とヨネト先生。先生ははっきりとダメ出しをし、常に本音で接している。時にはスティックを持つChaBaBaさんの後ろにまわって手を添え、同じフレーズを何度もできるまで一緒に繰り返し、体で覚えさせることも。「先生から褒められたことはないですねえ。たまには褒めてほしいですけどね」とChaBaBaさんは笑う。
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闘病生活を繰り返した2025年がもうすぐ暮れる。「来年はいろんなミュージシャンの方々とコラボして、完全復活を目指したい」とChaBaBaさんは力を込める。11月には天神の親不孝通りにあるライブハウスへ、知人のミュージシャンのライブを聴きにいった。ワイングラスを手に歌声を聴き、約2時間をノリノリで過ごした。
すでに出演が決まっているイベントもある。2026年2月22日、横浜の港南公会堂で開催される「第1回星野希伊 歌謡フェスティバル」にゲストアーティストとして出演する予定だ。
病気になる前は「100歳まで叩くのが夢」だと言っていたが、最近、心境の変化があったという。「100歳まで生きられるとしたら、最後の4、5年は何も考えず、縁側で日向ぼっこして過ごしたいな」
「だけど、それまでは常に目標を持ってチャレンジしていきたい。年齢がいくつであろうと、何でもやればできるということを、ドラムを通じて伝えていきたいです。若いころから思っていたんですけど、人生最後に『我が人生万歳』と言えたら最高ですよね」
年齢も病気も軽快なビートで乗り越えて、ChaBaBaさんの挑戦は続く。
ChaBaBaさんのYoutubeチャンネルhttps://www.youtube.com/chababa
ホームページhttp://chababa.jp/