寒い季節、ホッと一息つける喫茶店やカフェが恋しくなります。Aさんは久しぶりに会う友人と、カフェで楽しい時間を過ごしていました。会話も盛り上がり美味しいコーヒーを飲んでいると、友人が突然バッグから水筒を取り出しました。
何をするのか見ていると、なんと友人は自分のカップに注がれたコーヒーに、水筒に入った白湯を注ぎ始めたのです。
Aさんは驚きのあまり目を丸くし、白湯を注いだ理由を友人に尋ねると、友人は悪びれる様子もなく「だって、このコーヒー、ちょっと苦いから」と言います。
確かにその店のコーヒーは、豆の個性が際立つ深煎りで人によっては苦みが強く感じられるかもしれません。しかし「持ち込みの白湯でコーヒーを薄める」という行為は、果たしてカフェでのマナーとして許されることなのでしょうか。そこで、自身もカフェを営むコーヒー専門家の柳隆晴さんに話を聞きました。
快適な空間を皆で共有するためにも周囲への配慮は大切
ーコーヒーに持参したお湯を注ぐ行為について、マナーの観点から問題ないのでしょうか
一般論として、店舗で販売されているもの以外を持ち込んで飲食することは控えるべきだと考えています。これは、飲食店全般の基本的なマナーです。そのため、自分の持ち込んだお湯をお店が提供した商品に加える行為は、マナーとして好ましくないという判断になるでしょう。
喫茶店やカフェは、商品だけでなく空間そのものを含めて楽しんで頂くために、料金をいただいています。持ち込みによるアレンジは、他のお客様の雰囲気にも影響を与える可能性があり、不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。快適な空間を皆で共有するためにも、周囲への配慮は大切だと考えます。
ーもし持ち込みによるアレンジを見かけたら、どのような対応をされますか
これまでお客様がご自身で持ち込んだお湯を注ぎ足す場面を目にしたことはありませんが、仮にそういう場面に出くわした場合、店側の立場としてはお声がけさせていただくことになります。もちろん、赤ちゃんのミルク用の白湯などは例外ですよ。
もし「苦くて飲みにくい」「冷まして飲みたい」といった理由でお湯を必要な場合は、店員に伝えてもらえば、量の限度はありますがお店が用意したものを使っていただく分には問題ありません。
ー持参した白湯を加える行為は、「苦みを和らげたい」「冷ましたい」など理由によって、マナー面での受け止め方は変わるのでしょうか。
動機が何であれ、お店の商品に対してお店が把握していないものを加えるという行為自体に根本的な問題があると考えます。例えば極端ではありますが、ティーパックで提供している紅茶を飲み終わった後に、持参したお湯を注いで2杯目を飲むという行為をされたとしましょう。この場合、お店の許可なくタダで商品を追加製造していることになり、アレンジを通り越して無銭飲食と変わりないですよね。
ご友人の行為はそこまで極端ではないかもしれません。しかし「持ち込みで商品の性質を変える」という点で、お店側から見ると本来提供したいサービスや商品の形とは異なってしまう、と捉えられる可能性があるでしょう。
ただ、お客様がなぜアレンジをしたいのかは理解できるので、やはり店員に伝えてお店のものを利用するのが良いと思います。お店のサービスをまず利用していただくのが、スムーズな解決策だと思います。
◆柳隆晴(やなぎ・たかはる)/元コーヒー嫌いのバリスタ
バリスタとして仕事をしながら、年間300件弱カフェ巡りをしています。本業がコーヒーで、これだけカフェ巡りをしている人はほとんどいないと思っています。元々コーヒーが苦手だったので、コーヒー初心者の気持ちに寄り添えるのが強みです。コーヒー初心者の方に「誰にでもわかりやすい言葉でコーヒーの楽しさを伝える」をモットーに、SNSなどで発信活動をしています。1人でも多くの方が、コーヒーに少しでも興味を持ってもらえたらうれしいです。