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本堂広場と方丈庭園を修復 京都・上京区の勝巖院、CFで支援呼びかけ 住職は元高校野球監督

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 高校野球の監督と寺の住職という「二足のわらじ」を長年はき続けた男性がいる。4年前、監督を退き、コーチに就任。同時に軸足を寺へと移し始めた。ユニホーム姿から法衣姿に改め、荒廃した寺の庭園修復を目指し、クラウドファンディング(CF)での費用集めに全力投球する。

 男性は立田歓学(かんがく)さん(57)。京都工学院高(京都市伏見区)硬式野球部のコーチとして選手を指導する傍ら、浄土宗(総本山・知恩院)の勝巖院(しょうがんいん、京都市上京区下立売通千本西入ル)で住職を務める。

 小学生で野球と出会った立田さんは、北稜高(左京区)に進み、創部間もない硬式野球部に所属した。高校1年のとき、立田さんの野球人生を決定付けた試合があった。1984年7月19日。北稜高は太陽が丘第1球場(京都府宇治市)で、古豪・西京商(現西京高、中京区)と対戦した。

 北稜高は三回、四回と得点を積み重ねて3点をリードしたが、終盤の九回表で同点に追いつかれた。直後の九回裏、北稜高は代打の部員がサヨナラ打を放つ劇的勝利を飾った。立田さんは「みんな泣いていた。涙を流して喜ぶうれしさを伝えたい」と強く思い、将来も高校野球に携わると誓った。

 大学進学後は勉学に加え、浄土宗の住職になるための資格取得に励んだこともあり、バットを握らない日もあった。それでも卒業後、職員として配属された紫野高(北区)で監督に就任。同時期に祖父から勝巖院住職を受け継ぎ、野球部監督と住職の「二足のわらじ」生活が始まった。

 1週間のうち多くの時間は野球部監督に費やし、合間に寺の法務を行った。午前中に檀家(だんか)の法事を営み、午後から練習という日もしばしば。特に秋の彼岸の時期は、秋季京都府大会の日程に重なる。日程を調整し両立を図った。紫野高以降、塔南、伏見工、日吉ヶ丘の各高校の硬式野球部で監督を務めた。

 校内練習だけでなく、近隣府県での練習試合にも出かけた。東海大仰星高(大阪府枚方市)との対戦では、元プロ野球巨人の上原浩治さんがいた。敦賀気比高(福井県敦賀市)との試合では米大リーグで活躍する吉田正尚選手がいたことを思い出として語る。

 「野球は人間力。人間を高めないといけない」。立田さんは住職であることを生かし、法話の要素を交えながら、部員に接したこともあったという。

 2021年に監督を後進に譲った。ユニホームより法衣を着る機会が増えたこともあり、寺の整備に注力することにした。

 寺の本堂と方丈前に広がる庭園は約300平方メートル。2基ある石製五重塔のうち1基は住職就任時から倒れたままだった。

 今年10月からクラウドファンディングを開始し、整備費用を募る。完成後を見据えて「新たな庭園は人間の力が宿るような場所にしたい」と期待を込めて語る。住職として新たな試練に立ち向かっている。

 クラウドファンディングは来年1月14日まで京都新聞社が運営する「THE KYOTOクラウドファンディング」で受け付ける。

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