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古代アメリカ大陸の土器や土偶が岡山で見られる?? 開館50年!国内有数コレクション 解説ツアーが人気「BIZEN中南米美術館」

山陽新聞社 山陽新聞社

 古代アメリカ大陸の土器や土偶などを収蔵するBIZEN中南米美術館(岡山県備前市日生町日生)が、今年で開館50周年を迎えた。紀元前4000年~16世紀前半の約2700点のコレクションは国内有数規模。新型コロナウイルス禍を機に始めた館長による少人数制の展示ツアーが好評を博し、独自の寄付制度を設け利用してくれた人を「村人」と認定するなどユニークな取り組みも人気を集めている。

 「日本ではインカ帝国が有名ですが、実はごく最近のもの。中南米にはもっと古い時代から多様な文化があった」

 動物や人を独特の形にデフォルメした土器や土偶、色鮮やかな織物が所狭しと並ぶ館内を、森下矢須之館長(69)が数人の来館者を連れて歩く。

 注目の展示品は足を止めて詳細に解説し、時には数千年前の土偶を展示ケースから取り出して見せることも。大阪府から訪れた会社員田中かな子さん(46)は「東京や大阪の美術館でもここまで多くの文化財を間近に見ることはできない。説明も丁寧で、ほかでは体験できない面白さ」と感動した様子だ。

 同館は1975年3月、旧日生町で漁網製造業を営んだ森下館長の祖父・故精一氏が収集したコレクションを基に森下美術館として開館。2005年に現在の名称に変更した。展示スペースは1、2階の計約300平方メートル。入館は原則事前予約制で、1日最大4回のツアーが組まれる。

 コロナ禍以前の入館者数は年間約4千人だったが、20年度は1400人まで低迷。当時、密を避けるためにやむなく少人数の予約制ツアーを始めると意外にも人気を集め、現在も続けている。

 20年7月には運営資金を確保しようと寄付制度を導入した。現在は6千~9千円のコースがあり、館長が寄付者の名前を古代マヤ文字に変換して記したはんこやシールを返礼品として用意。寄付者を「村人」と呼び、メールマガジン配信や集いを開催している。来館時は、展示品に直接触れる体験も提供する。利用者数は合計約3200人。

 制度導入後は、村人自身のリピートや口コミの広がりで来館者は増加し、コロナ禍前の水準に回復した。森下館長は「来館した5人に1人は村人になってもらえている。中南米文化の魅力に加え、職員のホスピタリティーが満足につながっている」と話す。今後はより「村人」制度の強化や周知に取り組み、5千人台を目指す。「日本全国に数十万人とされる中南米好きを日生に呼び込みたい」と意欲を燃やす。

 BIZEN中南米美術館は、古代の衣類や酒器、土笛など当時の色彩を感じられる約360点を集めた開館50周年記念展「古代アンデス『色』の匠」を開いている。来年4月5日まで。

 岡山県外の個人から昨年寄贈され、初公開している人の頭骨は、ペルーの中部海岸地域で栄えた「チャンカイ文化」(1000~1470年)のもの。後頭部に外科的手術があったことを示す約10個の小さな穴が開けられていて、目を引く。

 飲み物を入れる「鐙(あぶみ)型ボトル」を展示するスペースには、貴人の顔やヤマネコなどを精巧にかたどったものが並ぶ。アルパカの毛を鮮やかな赤や黄に染めて織られたナスカ文化のポンチョもある。

 笛のコーナーでは、液体と空気が内部を移動することで音が鳴る「笛吹きボトル」や笛の機能がある土偶、土笛を飾る。エクアドルのチョレーラ文化の鳥を模した笛吹きボトルは水を入れて揺らすと鳥の鳴き声のような高い音が響く。説明文のQRコードを読み込むと、実際に水を入れて鳴らす動画が見られる。

 BIZEN中南米美術館の森下矢須之館長に同館の特色や古代中南米の文化財の魅力を聞いた。

 ―古代中南米専門の美術館としては日本で唯一という。

 初代館長である祖父・精一が、地元日生に文化的な貢献をしたいと作った。古代中南米の全地域、全時代を網羅し、エクアドルやコロンビアなど中間領域の文化財を多数所有するのは日本でもここだけ。現在も全国からコレクションの寄贈があり、収蔵点数は増えている。

 ―館長の展示ツアーが人気を博す。

 私自身は古代中南米の歴史を研究しており、放送大非常勤講師を務めている。東京大をはじめとする研究機関や国内外の研究者とも情報交換をして、ツアーでは一般の解説書にはない逸話や最新の研究成果を伝えるようにしている。美術館を一般の人と研究者をつなぐハブにしたい。

 ―古代中南米の品々の魅力は。

 素朴さ。備前焼にも通じるところがある。動物や人間など身近な題材を面白く、かわいらしくデフォルメしていて、初めての人でも十分楽しめる点も魅力だ。記念特別展では多彩なモチーフの土器や織物を展示している。ぜひお気に入りの一品を見つけてほしい。

 【メモ】午前10時~午後4時45分。月曜休館。入館料は大人700円、大学・高校生500円、小中学生300円。前日までに電話(0120―346―287)で来館予約する。

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