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5歳の時に亡くなった父…ドラマ『ブラックペアン』監修医が体験した“心の再生”とウイスキーの記憶

渡辺 晴子 渡辺 晴子

5歳で父を亡くした記憶と、33年後にウイスキー一口で訪れた“心の安寧”。心臓血管外科医の山岸俊介さん(イムス東京葛飾総合病院 心臓血管外科医長)がX(旧Twitter)に投稿した実体験が、多くの読者の胸を熱くしています。

投稿には、幼い日の父との記憶、突然の別れ、そして大人になった自分を静かに癒やした“再会の瞬間”が綴られていました。

 5歳で突然の別れ 「お父さんは生き返るよ」

山岸さんの父親は心臓外科医でした。しかし手術中の針刺し事故から劇症肝炎を発症し、帰らぬ人に。

当時5歳だった山岸さんは、お葬式で泣きじゃくったといいます。祖父は抱きしめながらこう言いました。

「〇〇年後にはお父さんは生き返るよ。だから大丈夫だよ」

その言葉に安心し、泣き止んだ幼い自分の姿を今も覚えているそうです。

 「はい、おやすみ」が聞こえない夜

父は忙しい日々の中でも、早く帰れる日は家で医学書を開きながらウイスキーを飲んでいたといいます。

山岸さんが眠る前に声をかけると、父は必ず優しい笑顔で、「はい、おやすみ」と返してくれた。

「眠っている間に死んでしまったら……と毎晩不安だった私にとって、この『はい、おやすみ』が心の支えでした」

しかし父を失ってからは、その言葉が聞けない夜が続き、漠然とした不安を抱えたまま眠りにつく日々が続いたといいます。

33年目に訪れた不思議な“つながり”

スピリチュアルの世界では「33年で生まれ変わる」という説があります。

父が亡くなって32年経った2018年、山岸さんは二宮和也さん主演のドラマ「ブラックペアン」の監修を担当。そこで出会った俳優の小泉孝太郎さんに、初めてウイスキーを勧められたそうです。

「一口飲んだ瞬間、父が勉強しながらウイスキーを飲んでいた姿が浮かびました。ずっとつながらなかった何かが“カチッ”とはまったような感覚でした」

それ以降、長年抱えていた“いわれなき不安”がスッと消え、眠れるようになったと語ります。ちょうどドラマの監修を務めた翌年の2019年のこと。父親を亡くして33年目でした。

 「父が助けてくれている瞬間は何度もあった」

心臓外科医として独立するまで、友人も作らず努力を重ねてきた山岸さん。手術が困難な状況でも、「父が後ろで支えてくれているような感覚は常にある」といいます。幼い頃に習わせてもらった絵やピアノは、現在の繊細な手技にもつながっています。

「父ができなかったことをやり続ける。それが僕の生き方になっています」

喪失の先にある“もう一つの生き方”

投稿に込めたメッセージを尋ねると、山岸さんは静かに語りました。

「志半ばで生きたくても生きられなかった人の分まで、今を生きる僕らは頑張るべきだと思うんです」

「大切な人は必ず心の中で一緒に生きています。喪失ではなく“心に宿る希望”として、その人の分まで生きてほしい」

最後に、父の死を知らせる直前の不思議な体験も話してくれました。

深夜、群馬の祖父母宅で眠っていたとき、全身に突き抜けるような衝撃が走り、「お父さんが死んだ」と直感。起きて祖父母に尋ねると、ちょうどその時刻に父が亡くなったと知らされたといいます。

 「心の中のお父さんと共に」

39年前の別れから続いていた“言えなかったおやすみ”。33年目にウイスキーが運んできたのは、父からの「もう大丈夫だよ」という静かなぬくもりだったのかもしれません。山岸さんは今日も、心の中の父と共に、救える命を守り続けています。

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