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「あなたには余白が足りない」店長候補の胸に刺さった言葉 後輩に容赦ない完璧主義者がズル休みで気づいたこと【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

多くの人間関係がこじれるきっかけは、何気ない一言から生まれるのかもしれません。漫画家・ぼのこさんの作品『アパレる』から抜粋された『248話:私じゃダメ?』以降の一連エピソードでは、元アパレル店長の作者が描く従業員の人間模様が描かれています。

主人公・桜木春子は店長との面談で「店長職も視野に入れていい」と言われ、ゴキゲンな様子で同僚と雑談しています。そのとき次期店長候補のリーダー・水仙はその話を聞いてしまい、動揺を隠せません。

実は水仙は、店長との面談で「店長職を目指すなら、今のままでは難しいかも。あなたは『完璧』だけじゃなくて『余白』を持って任せることを意識してほしい」と言われ落ち込んでいたのです。水仙は内心「私よりあの子のほうが店長に向いているっていうの!?」と思い、その場を立ち去っていきました。

後日、店長と水仙がメインディスプレイに並べる商品を相談していました。そこで春子がディスプレイの提案をしたところ、店長から「やってみる?」と水仙の担当だった仕事を任されます。

春子が並べたものを水仙がみたところ、テーマも世界観もバラバラ。水仙はつい口出ししそうになりましたが、店長が言っていた「余白を持って任せる」を思い出し、なにも言わずに様子をみました。

すると、バラバラの世界観にも関わらず商品が売れてゆくのです。水仙は、自分の信じてきたものを失った気分になりショックを受けました。そのうえ、春子は水仙にまったく相談もなくディスプレイを並べていきます。

そんななか、ミスが発覚しました。春子が陳列したディスプレイで、普通のカーディガンを『接触冷感』として置いてしまっていたのです。これをきっかけに、水仙は今までの不満を爆発させるように春子に怒鳴りつけます。

しかし水仙自身もそこまでキツく言うつもりはなく、帰路で自己嫌悪に陥ってしまいます。帰宅後、水仙は泣きながら床で眠ってしまい、気付くと朝。昨日の服のまま、水仙はふと「仕事行きたくない」との感情が湧き上がってくるのでした。

いままで完璧主義だった水仙は、初めてズル休みをしてしまい散歩に出かけます。散歩中、近くのケーキ屋さんにてモンブランを購入すると、店員がレジの訂正方法が分からずしどろもどろしていました。

店主が「ごめんねー」と出てくると、2人とも笑顔で水仙に話しかけます。水仙はケーキ屋に対して「ミスもあったのに全然いやな気がしない」と感じました。店員のお店への愛情、店主の寛容さ…ケーキ屋の出来事を思い出しながら、水仙は「自分に足りなかったもの」に気付かされたのです。

次の日、水仙はいつも通り出勤しました。水仙は春子に話しかけたいものの、2人の間には変わらず気まずい雰囲気が流れています。そのとき、春子から水仙に「すみませんでした!リーダーの気持ちまで考えられずに…」と謝罪します。

そしてお互いの思いを打ち明け、わだかまりは解消。そこへ2人の話を聞いていた店長が訪れます。実は2人とも店長候補ですが春子は『店長を視野に入れていい段階』、水仙は『あと少しで店長になれる段階』だったのです。

2人とも店長候補の認識を勘違いしていたようですが、お互いを意識して自分を見つめ直すきっかけになったのです。

アパレル業界のリアルな人間模様を描いた同作について、作者のぼのこさんに話を聞きました。

後輩「抜かす側」先輩「抜かされる側」どちらにも葛藤がある

―同作を執筆するにあたって、きっかけなどは。

きっかけは、私自身が販売員として働いていた頃の経験からです。当時、後輩が先輩を追い越して昇進していく場面を幾度も目にしました。そして私自身もまた、後輩として先輩を追い越す立場を経験したことがあります。

これらは社会のなかでは決して珍しくない出来事ですが、その背景には「抜かされる側」の葛藤と、「抜かす側」の立ち振る舞いの難しさが常に存在します。このストーリーでは、そうした人間関係の機微をできる限りリアルに描いてみたいと考えました。

―ぼのこさんがアパレル店長を勤めていたころ、スタッフの勘違いを引き起こさないために気をつけていたことはありますか。

水仙と春子のあいだに軋轢が生じたきっかけは、面談内容に関する“何気ない雑談”からでした。春子も先輩スタッフたちも悪意はなく、日常会話の延長にすぎなかったのですが、偶然それを耳にした水仙が動揺してしまった。まさに小さな行き違いから生まれてしまった事故のようなものでした。

店長という立場でも、スタッフ同士の会話を細かく管理することは難しいです。ですが、「面談や評価の内容は口外しない・聞かない」といった基本的なルールを設けることで、こうした誤解はある程度防げたのかもしれません。一方で、細かなルールづくり(マイクロマネジメント)はスタッフを守る反面、職場の居心地を損なう可能性もあるため、そのバランスを見極めることが重要だと感じます。

―メッセージをお願いします。

本エピソード(第248〜261話)は、『アパレる』Kindle第16巻に収録されています。春子の成長や、水仙との関係性がどのように築かれてきたのかは、過去のエピソードでも丁寧に描いております。併せてお読みいただくことで、より深く物語を味わっていただけるかと思います。

『アパレる』では、アパレル販売員に限らず、さまざまな職場で働く方々にも共感していただけるよう、人間関係やキャリア、仕事への向き合い方をテーマに描いています。InstagramやX(旧Twitter)でも作品を公開しておりますので、ぜひそちらでもご覧いただけますと幸いです。

<ぼのこさん関連情報>
▽電子書籍『アパレる』(Amazon)
https://amzn.to/4gmTv68
▽X(旧Twitter)
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