京都市は今夏、認知症の人が行方不明になった際に市民の協力で早期発見につなげる「みまもりあいプロジェクト」を開始した。専用のスマートフォンのアプリとステッカーを使い、家族が発信した捜索依頼を市民が共有できるようにする。市は2万人のアプリのダウンロードを目指し、捜索の「網の目」の拡大へ協力を呼びかけている。
プロジェクトは、一般社団法人セーフティネットリンケージ(札幌市)が開発した「みまもりあいアプリ」を活用する。家族が行方不明情報を発信すると、アプリをダウンロードした人に通知が届く。通知の範囲は最大半径20キロ。アプリのダウンロードは無料で、個人情報の登録も不要。
利用者の家族には専用のステッカーが配布される。つえや帽子、鞄など外出時に持ち歩く物に貼ってもらうことで、身元の特定をスムーズにする。ステッカーにはフリーダイヤルとID番号が記載されており、発見者が電話してIDを入力すれば、登録されている家族の連絡先に電話がつながる。家族の迎えを待つのか、交番にいったん連れて行くのかなどは双方の話し合いで決めてもらう。
ステッカーを個人で利用する場合、入会金2千円と年会費3600円が必要だが、今回は市が初年度分を全額負担する。市と法人の協定に基づき、2年目以降の年会費も発生しない。事業費は710万円。市は900人の利用を見込んでいる。
警察に届け出があった認知症による府内の行方不明者数は近年、500人台で推移しており、京都市内では約300人と推計されている。届け出がないケースも含めると実際の数はさらに多い可能性がある。
京都市によると、アプリはすでに全国51自治体が導入しており、府内では木津川市や精華町が活用している。政令市では堺市も導入しており、早期発見につながったケースもあるという。京都市は7月から、認知症の家族からの申請を受け付け始めた。アプリをダウンロードしてもらうよう商店街や公共交通機関などに協力の依頼も進めている。
市介護ケア推進課は「GPS端末の貸し出し事業も行っているが、貸し出しは1台限りで持ち忘れのリスクもある。アプリとステッカーの活用で見守りの『網の目』を細かくすることができれば」としている。