誰にでも「コンプレックス」はあります。しかし、それをきっかけに人生を大きく変える経験をする人も少ないでしょう。そんな、自身の劣等感を原動力にして歩んできた日々を描いたエッセイ漫画『コンプレックスと進む道』(作・daydayさん)が話題を集めています。
物語は、元ファッションモデルのdaydayさんが、自身の過去を静かに振り返る場面から始まります。「全ての経験は今に繋がっている」と語る姿には、過去を受け入れた強さと深みがにじみ出ているのでした。
彼女の「今は歩幅も歩く速さもあの頃とは違う。窓に映る姿はもうあの頃の私じゃないけど、姿勢だけはあきらめない」という思いを語った言葉には、年齢を重ねたからこそのしなやかな前向きさと美意識が感じられます。
今でこそ「背が高い=素敵」という価値観が浸透していますが、daydayさんが高校生だった頃は違いました。当時は「規格外」という言葉がぴったりなほど、長身の女性が珍しく、注目されることが多かったのです。
彼女が「みんなのように小さく、女の子っぽく生まれたかった」と悩み続けた思春期には、電車ではなるべく目立たないよう、みんなより一段低いステップに立っていました。そして同じ電車に乗る片思いの人にも、自分の方が背が高かったため、ただ遠くから見つめるだけの日々を送ります。
当時のdaydayさんにとって、小柄で可愛らしい女の子たちは憧れの存在でした。流行していた「聖子ちゃんカット」や「ピンクハウス」のファッション、リボンやシュシュ、キラキラした毎日..そんな「女の子らしさ」に心を奪われていました。
そして、daydayさんはコンプレックス=劣等感だと考えます。その感情の背景には「みんな同じであること」を重んじる日本の文化や家庭環境が関係しているのではと分析します。また、彼女の父親は「世間様に恥ずかしくないように」と規律を何よりも大切にするタイプだったそうです。
そんな厳格な父が求める「理想の女の子像」は、小さくて可愛くて、控えめな存在を表しており、彼女にはどれも当てはまらなかったと語ります。やがてそれらは、彼女の中で大きな劣等感となっていきました。そして「このコンプレックスお化けを投げ飛ばさないと、前に進めない」そう強く感じるようになったdaydayさんは、思い切ってファッションモデルの世界に飛び込みます。
「背が高くて他の女の子と違う」という理由で悩んでいた少女が、その特徴を生かしてモデルとして輝く、まるでドラマのような転機でした。そんな同作について、作者のdaydayさんに話を聞きました。
悩みは、時間と笑いで自分のエネルギーになる
ー同作を書こうと思ったきっかけは何でしたか?
昔は自分のことが好きではありませんでした。しかし自分の経験を自分で「あれも大切な時間だった」と認め、見つめ直せるようになったからです。
当時はただ必死で、置き去りにしてきた気持ちもたくさんありました。でも今は、それを描くことで少しずつ自分を癒せている気がします。
「笑いながら過去を描けるようになった今だからこそ、描ける物語がある」そんな思いで始めました。
ーモデル時代と今の自分、どんなふうに変わったと思いますか?
エッセイにも書いていますが、私はコンプレックスが全ての始まりでした。周りから拒否されてきたように感じていたので、当時は「選ばれたい」「認められたい」と思うばかりで、自分の軸がなかった気がします。
今は「自分で自分の生き方を選ぶ」という視点を持てたことで、ようやく心が自由になりました。ファッションの世界で学んだ「表現することの怖さと美しさ」は、今も私の中で大切なテーマです。
ー最近ご自身がワクワクを感じた瞬間はありますか?
景色や音、言葉など、何かに感動した時や、何より自分の描いたエッセイ漫画に、「私も同じでした」とコメントをいただく瞬間です。その言葉を読んだ時、「描いてよかった」と心から思えます。
これからもnoteで、同世代をはじめ、さまざまな世代のみなさんと「生き方を共有」できるような話を描いていきたいです。
私は摂食障害やパニック障害などを経験しましたが、今はそれも必要なことだったのだと思います。当時は話せなかったテーマにも少しずつ触れていくつもりです。
ー最後に読者に一言お願いいたします!
悩みは、時間と笑いで自分のエネルギーになると思っています。私の作品が、どこかで誰かの「少し軽くなるきっかけ」になって、この先みなさんと一緒に進んでいければ嬉しいです。
<daydayさん関連情報>
▽note
https://note.com/kotobaday
▽Instagram
https://www.instagram.com/dayday80mode/