外国人も同じ…「無謀な登山者」に共通する「言い訳」
ーー京都市内にある山だから楽勝だ、と勘違いしているのでしょうか。
「今も昔も、山が危険の多い場所であることに変わりはありません。愛宕山の登山は往復で平均6時間以上かかります。山なのでスマホは圏外になることが多く、繋がっても目印になる場所は少なく、英語など外国語による案内看板もないため、救助や捜索に時間がかかります。また、愛宕山は崖崩れなどが起きている場所もあり、ツキノワグマも出没するため大変危険です。
昨今の山の遭難・事故は起こるべくして起きていると感じます。外国人に限らず、無謀な登山者の多くが、現場の注意や指示に従ってくださいません。危険であることをわかろうともせず、わかっていたとしても、こちらに強い権限がないため、皆さま口を揃えたように必ず同じことを言い張ります。それは、『ここまで来たんだから帰らない』です。自分ルールが発動し、頑なに引き返せない人が大半です。そして強行し、起こるべくして遭難や事故に遭う。この繰り返しです。現地の方からの注意・警告はあなたの命を守るためであることを真摯に受け止め、山のルールに従っていただきたいです。『郷に入っては郷に従え』です」
深刻な「山のトイレ問題」
ーー遭難や事故以外にも、登山者による問題はありますか?
「他の山のお寺さんでもニュースになっていましたが、『トイレ』の問題です。愛宕山の山道には頂上までトイレがありません。そのため、月輪寺でも同じように、境内や立入禁止場所にあるトイレを無断で使用されたり、ドアを破壊して使用される方がいらっしゃいます。里のトイレと違い、水道や車道がない場所にある『山のトイレ』の管理がいかに大変であるかを理解していらっしゃらない方が多く、対応に困っております」
引き返す「勇気」を
ーー登山者に心がけてほしいことはありますか?
「愛宕山の場合ですと、①必ず午前中に登山を開始し、午後からは入山しない、②愛宕山に関する必要な情報の把握、③最低1日以上は山(野宿)で過ごせる装備と食料の準備、④当日の天気予報と自身の体調チェック、⑤当日の行程表を家族や友人などに必ず伝える、またはメモを残しておく、を守ってください。
そして、状況次第では下山や登山口で引き返す『勇気』を持っていただきたいです。また、山では必ず、現地の人が伝える情報(危険情報など)や看板などに書かれていることを守ってください。家に帰るまでが楽しい登山であってほしいと、心から願っております」
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月輪寺の境内は今、愛宕山に生息する野生の鹿の楽園になっているという。
鹿以外にも、愛宕山には多くの野生動物(クマやイノシシ、マムシなど)が生息しており、登山者との遭遇事故も多いそうだ。
「近年の異常気象の影響もあり、愛宕山の斜面は至るところで土砂崩れなどが発生しております。危険な場所が多数あることを念頭に置き、ご自身の安全を十分に考慮して、登山やご参拝をしていただきたいと思っています」(月輪寺・広報)
愛宕山では2012年の集中豪雨による土砂崩れが発生し、月輪寺の愛宕大権現堂も堂内が土砂で埋もれ全壊。2018年の台風でも大きな被害を受けたことから、存続の危機にある月輪寺では現在、災害復旧の支援を募っている。
なお、月輪寺へのアクセスは徒歩のみとなる。山道はかなり険しく、登山用の運動靴・ツエが必須(革靴・ハイヒールは不可)だ。
参拝時間:10時~14時。雨天や強風時、大雨の後、冬季(12月~3月上旬)は参拝不可。※宝物館の拝観は、事前の電話連絡(予約)が必要。