20年越しの店じまい―。岡山市中心部の表町商店街にある「マツオヤ食器店」跡で10月2日から「閉店セール」が行われている。3カ月間限定で店の在庫を一掃する。主催者は「今では手に入らない貴重な品や〝レトロかわいい〟食器たちがそろっている。お気に入りをみつけて」と来店を呼びかけている。
マツオヤ食器店は戦後すぐの創業。創業者で店主の有松武太郎さんが他界するまで、約60年にわたり岡山の人々に親しまれた。有松さんの娘で店を所有する女性(72)=神戸市=によると、店を相続した子どもたちも生活拠点が遠いなどの理由で事業を続けられなかったが「父が手間をかけて集めた品々で、貴重なものもある」と、手を付けないまま20年が過ぎたという。
閉店セールは昨年、商店街の活性化に取り組む岡山市表町商店街連盟理事長の片山進平さん(45)が所有者の女性に企画を持ちかけて実現。片山さんが経営する街づくり会社「STAPPY」が販売を代行して商品を片付け、物件を賃貸や販売できる状態にした。
商品棚には値札が付けられた食器や調理器具など数千点以上がそのままの状態で残っていた。セールでは20年前の価格から3~5割引きなどで販売。デンマークの老舗陶磁器ブランド「ロイヤルコペンハーゲン」のティーポットや「HOYA」のコーヒーセットなど貴重な商品から、家庭用の数百円の茶わんや湯飲み、グラス、天井からつるすライトやシャンデリアなど幅広い品がそろう。中には26万円のオランダ製の器や「ピカソ」の署名が入る5万円の絵画などもあり「思わぬお宝が眠っているかも」と片山さんは話す。
岡山市の調べでは表町の約2割の店舗は営業していない。「セールが、同じような理由で稼働できない物件を抱える所有者が動き出すきっかけになれば」と片山さん。所有者の女性も「店が誰かに渡り、表町が活気づいてほしい。昔の商品だが父の目利きで物は良いはず。ぜひ購入して大切に使って」とする。
セールは12月28日まで。午前11時~午後5時。火、水曜日は休み。店内でシェア型書店イベント「みんなの表町書店」を同時開催する。問い合わせは片山さん(090―9392―5278)。