「ここ数日、小さな黒い虫が家の中を飛んでいる姿を見かけるんだけど。もしやコクゾウムシか?!」
我が家のキッチンを飛ぶ小さな虫。発生源を突き止めねばと、お米はもちろん、粉類、スパイスなどまでチェックしたけれど、見つからず。ただ、食材を保管している棚の奥から、カサカサと音が聞こえてきます……。
なんと、サムゲタン用の調味料セットが入ったビニール袋に、小さな茶色い斑点がついてるではありませんか! モゾモゾ動く虫たちが入った袋を撮影して友人に見せると、「もはやホラーだな」とのコメント。まさか、キッチンの棚の奥で虫が湧いていたと思うと、恐ろしくなってきます。
「ここ1ヶ月、コクゾウムシを1日1匹くらい飛んでるの見つけて、発生源を探してた。昨日の晩、うどん食べようとしてやっと発見した!!七味だったのか〜、勢いよくうどんに振りかけて悲鳴あげたよ」
「母がココア飲もうとかき混ぜてたら、いつまでも溶けない塊があるのでよく見たらコクゾウムシだった 」
このように、SNSでもココアやスパイスに、コクゾウムシが湧いたという被害報告が見受けられました。
この迷惑なコクゾウムシについて、虫ケア用品最大手のアース製薬に、注意点などを伺いました。
注意すべき時期は、真夏だけではなかった?!
ーーコクゾウムシとは、どういう虫ですか?
「コクゾウムシは、その名の通り『ゾウの鼻』のような部位を持つ昆虫です。イネ科の穀物を食べる害虫として知られています。成虫の大きさは3mm程度で、黒い姿をしています。『ゾウの鼻のような部位』は口なんですよ」
ーー米に湧くとよく言われますが……
「メスが米に穴を開けて卵を産み付けるためです。コクゾウムシは、一生の間に約200個の卵を産みます。米ならひと粒に一つの卵を産み付け、孵化した幼虫は米粒の中で育ち、米から出てくる時には既に成虫になっています。卵、幼虫、蛹(さなぎ)の期間は米粒の中で過ごしているので、パッと見ただけでは確認できません」
ーー気づかずに食べてしまっていることもありそう! お米以外も食べるんですか?
「はい、お米だけを食べているわけではなく、蕎麦やパスタなどの乾麺、小麦粉、お菓子などにもつくことがあります。知らない間にそれらを餌にして数が増え、その後お米に移動してくることも考えられますので、他の食品をきちんと管理することも大切です。ちなみに、白米よりも玄米のほうがより繁殖しやすいです」
ーーコクゾウムシが見つかった場合、虫を取り除いたあとも食べないほうがいいですか?
「アレルギーなどの健康被害も考えられますので、食べることは避けた方がいいと思います」
ーーコクゾウムシが活発に活動する時期は?
「主な発生時期はおよそ3月から11月となり、梅雨から夏の時期に活発化し、15℃以上で発育し、越冬もします。しかし近年の住環境の変化により、冬場でも家の中の温度が15℃以上であることが多いため、冬でも増えてしまう可能性が! ちなみに、コクゾウムシは飛ぶことができるため、いつ家の食材に入り込むかわからないので油断は禁物です」
ーー年中注意が必要ですね。でもそもそもどうやって発生するんでしょう?
「お米の場合、原因はいくつか考えられますが、稲刈り後の製造過程で混入するケースなども考えられます。精米技術が進化しており、虫が入り込むことは考えにくいのですが、すでに米粒に産み付けられた卵が混入し袋の中で育ってしまうことも考えられますし、米袋の小さな通気穴から侵入するケースも考えられます」
ーー対策は?
「コクゾウムシは、15℃以下33℃以上では繁殖できませんので、最も重要な点は『低温で保管すること』です。冷蔵庫の中は温度が低いため、もし卵が産み付けられていてもそれ以上発育が進みません。
『密閉したところに入れる』ことも重要です。米袋には空気を循環させるための小さな穴が開いており、米が乾燥してしまう可能性があるためです。できるだけ、密閉できる容器に入れてから冷蔵庫で保管する方法がおすすめです。
もちろん、小麦粉やスパイスなど、コクゾウムシが好むものを保管する際も、同様に低温で保管を」
犯人はコクゾウムシではない?!コナナガシンクイだった
お米に発生するのは、コクゾウムシだけではないそうで、筆者の調味料に発生したのは、違う虫だと判明!
ーーコクゾウムシ以外の害虫もいますか?
「注意すべきお米の害虫には、ノシメマダラメイガの幼虫や、コナナガシンクイ(別名:ナガシンクイ、オオムギナガシンクイ)の幼虫と成虫などがいます。
ノシメマダラメイガの幼虫は乳白色のイモムシで、終齢幼虫のサイズは約10~12mm。糸を吐いて穀物の粒を綴って巣をつくります。米が繋がったようになったり、成虫(10mm弱の小さな蛾)が部屋の中を飛んでいるのを見かけたりしたときには、この虫を疑ってみましょう。
コナナガシンクイの成虫は暗褐色の細長い甲虫で体長は2~3mm。見た目はキクイムシにも似ていますが、食性が大きく異なるため簡単に見分けることができるはずです」
ーーこれらの虫への対策方法は?
「コクゾウムシと同様に、お米などの食品を低温で密閉したところに入れて保管するのがおすすめです」
意外と食品を狙う害虫は多いと知り、自宅の保存環境を考え直すべきだとわかりました。そして、長く保管していた食品を食べる際には、よくチェックすることも必要そうですね。
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