「料理の注文で迷ったことが一度もない」
ハートフルコメディ映画『ルール・オブ・リビング ~“わたし”の生き方・再起動~』(9月19日公開)に主演する俳優・南果歩(61)が人生で掲げるルール。それは「自分で自分の機嫌を良くする」こと。悩まず迷わず、直感に従って好きなものを「好きだ」と口にすれば人生は開いていくという。
優先すべき自分の好き
本作で南が演じたのは、他人の事ばかりに自分の時間を費やしてきたシングルマザーの美久子。子育てはひと段落したものの、仕事や親の介護の問題に頭を抱える日々を過ごしている。
「美久子にはミドルエイジの女性が抱えがちな問題が集約されています。子育てや親の介護など人のために時間を費やしてきたことから、自分が何を好んで何をして生きていきたいのかを見失っている。長い時間をかけて身についた習慣によって自分自身の事すらわからなくなる。年配女性のあるあるを体現したようなキャラクターかもしれません」
かくいう南は演じた美久子とは違い、自分の「好き」を最優先する事を常に意識している。
「人に合わせる美徳も理解できるけれど、人間とは一つ一つ別の味わいを持った個体です。まずは自分の好きをはっきりと自分で言葉にする。意思を示せば、周囲に自分がどんな人間かを理解してもらいやすくなりますから」
日常的な些細な選択も直感で即答。「私はレストランでの注文時のメニュー選びにも迷いません。すぐに直感で『これが食べたい!』と選べる。大事なのは自分で自分の機嫌を取ること」
出会いはチャンス
単調な日々を消化する美久子の前に、アメリカ人バックパッカーのヴィンセントが現れる。価値観も文化もまるで違う3カ月間のルームシェアが、美久子の生き方を大きく変える。
「文化・言語の違うヴィンセントとのやり取りの中で生まれるギャップがコメディとして笑えます。その笑いの中に、自分で自分を語ることが一番自分を輝かせる術だという事がさりげなく描かれる。本音を交えたコミュニケーションを重ねていくうちに、美久子のマインドや表情はどんどん明るくなっていきます」
他者を受け入れたことで始まる、人生の新たなチャプター。ここにも南は共感を寄せる。
「自分一人の力だけでは風は吹かないけれど、人と人が出会い繋がることで風が吹く。幸せとは人が運んで来てくれるものだからです。性別、年齢、肩書に自分を縛ることさえしなければ、自分の人生を再起動させることはいつでも可能です。チャンスを生かすも殺すも、すべては自分次第。美久子の変化が誰かの背中を押すきっかけになったらうれしいです」