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大屋根リングの感動、次の世代に 女子高校生が始めた「大屋根リング 全残しプロジェクト」が大反響

中将 タカノリ 中将 タカノリ

大阪・夢洲に2023年6月に着工、2025年2月に竣工した大屋根リング

伝統的な木造工法である貫(ぬき)と最新技術を組み合わせ「多様でありながら、ひとつ」という会場デザインの理念を表現。建築面積約61000㎡、高さ約12m~20m、内径約615mという前代未聞のスケールで、2025年3月4日には「最大の木造建築物」としてギネス世界記録に認定された大阪・関西万博のシンボルだ。

当初、万博閉幕後には解体・撤去される予定だったが、イベントの盛り上がりの中で保存を求める声も多く上がるようになった。中でもSNS上で注目を集めるのは民間有志による「大屋根リング 全残しプロジェクト」だ。「この壮観は“ぐるり一周”つながっているからこそ生まれる」とし、一部ではなく全体を保存しようというこのプロジェクトを主導するのは大阪市内の高校に通う"みれみれ"こと朱詠瞳(しゅ・えみ)さん(18歳)。朱さんははたしてどのような思いでこのプロジェクトを立ち上げたのだろうか。

ーー開催前、万博についてどのように思っていましたか?

朱:開幕が決定した小学校の頃から大阪・関西万博にはとても興味がありました。4カ国語を話す私自身の背景から、万博で通訳としてボランティアをするのが夢だったのですが、年齢制限に引っかかってしまい断念。また開催時期が大学受験前に当たるので、会場を訪れることもなかなかできないだろうなと残念に思っていました。

ーー大屋根リングのことを知ったのは?

朱:私の通っている高校は夢洲の対岸にあって、近くの海辺の土手に登ると、着々と大屋根リングが出来上がっていくのが見えたんです。その頃はまだサイズ感がつかめなくて「京セラドームくらいかな」と漠然と思っていました。その後、4月に実施された開幕前のテストランに偶然当選。家族と会場を訪れたのですが、入場ゲートを抜けた瞬間に現れた巨大なリングの姿に圧倒されました。まるで『進撃の巨人』の街全体を囲む壁のよう。想像をはるかに超えるスケール感で、開いた口がふさがらないというのはこのことだなと思いました。

ーー朱さんにとってリングの魅力とは?

朱:リングの上に立つと向かい側にいる人が見えますよね。リングで向かい合っているとだいたい600m離れていることになるそうですが、大阪のような大都会で600m先の人を見るなんて機会はそうそう無いじゃないですか。少なくとも私にとっては人生初めての体験で、大きな感動を覚えました。

もう一つは周りが360度すべて空であるということ。学校が近いのであのエリアの夕焼けが絶景であることは知っていたのですが、リングと合わせるとさらに素晴らしい風景になるなと感じました。

ーーこのプロジェクトを発足させた経緯は?

朱:一部保存の案が出ているのを知ったのですが、もし将来私に子供が出来、一緒に一部保存されたリングを訪れて「昔はリングが一周繋がっていて、向かいに人が見えたんだよ」と話しても、なかなか想像しにくいんじゃないかと思いました。私が体験したような感動と、建築に携わった方たちの情熱を次世代にも伝えたいと思ったのがプロジェクト発足のきっかけです。

SNSで同じ思いを抱いている方たちがいるのを知り、共同でプロジェクトのXアカウントやホームページを作成し現在に至ります。

ーー6月29日には署名活動が始まりました。現時点での反響はいかがですか?

朱:ここまで急速に賛同の輪が広がるとは思っていませんでした。ですが万博協会や行政機関に思いを届けるにはさらに多くのご署名が必要です。引き続き、大阪、関西だけでなく全国の方に発信をしていきたいと思います。

また高校の先生方や友だちたちもそれぞれの繋がりでプロジェクトを拡散してくれています。「今後、街頭で署名活動するなら参加するよ」という声もあり、とても嬉しく思っています。

◇ ◇

SNS上ではこのプロジェクトが特定政党や企業の関与によるものではないかと邪推する意見もあるようだが、朱さんはじめ関係者はそれを明確に否定している。

年齢や地位を問わず、一人の熱意ある行動が社会を動かした例は数多い。1970年の大阪万博のシンボルだった太陽の塔も、当初は閉幕後に取り壊す予定だったが、一人の高校生が保存を求める手紙を協会に送ったことがきっかけで保存運動が広がり、現在にその雄姿を伝えている。朱さんが立ち上げた今回のプロジェクトが今後どのような反響を生むか期待したい。

大屋根リング全残しプロジェクト関連情報
ホームぺージ:https://savethering.net/
Xアカウント:https://x.com/GrandRing2025
オンライン署名:(リンク

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