“木造は弱い”はもう昔 万博の「大屋根リング」に続き、日本橋に18階建て、2041年には350mも計画中…巨大木造建築という新たな選択肢

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今年4月に開幕した大阪・関西万博。公式キャラクター・ミャクミャクの人気と共に、とても盛り上がっていますね。今回の万博は、世界158の国と地域、9つの国際機関が参加し、日本で開催される国際博覧会としては史上最大規模。会期は10月13日までです。

そんな万博の象徴的存在となっているのが『大屋根リング』。日本の建築家・藤本壮介氏が設計を手がけたこの建築物は、内径約615m、外径約675m、全周約2km、高さ約12m(外側約20m)、建築面積約6万1000平方メートルという圧倒的なスケールを誇り、2025年3月に「世界最大の木造建築物」としてギネス世界記録に認定されたばかりです。

『大屋根リング』は、日本の伝統的な貫接合(ぬきせつごう)を現代の耐震基準に適合させた構造で、ヒノキやスギなど国産材を約70%使用しながら、地上組立方式などの技術を導入して完成に至っています。

 “木造建築は弱い"は、もう昔の話!?

木造建築という言葉から、みなさんは何を思い浮かべますか?

おそらく多くの方が「ホッとする」「落ち着く」と感じつつも、「火災に弱い」「耐久性が低い」「地震に弱い」などのマイナスイメージを持っているのではないでしょうか。

ところが今、そのイメージを覆すような木造の建築物が『大屋根リング』に続いて姿を現そうとしています。どうやら"木造建築は弱い"はすでに昔の話になっているようです。

国内最大&最高層の木造オフィスビルが日本橋に

東京・日本橋。2024年の着工から、2026年の完成に向けて着々と工事が進められているのが三井不動産グループの『日本橋本町三井ビルディング &forest』です。

計画では、地上18階建て(高さ84メートル)、延べ床面積約2万8000平方メートルになる予定で、同エリアのランドマークとして知られる紀尾井町の『ホテルニューオータニ ザ・メイン』(高さ70メートル)をも凌ぐスケール。完成すると国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビルになります。

次に目指すは350メートル!? 進化を続ける木造建築

さらに、驚くべきことに、住友林業は2041年の完成を目指し、高さ350メートルという圧倒的なスケールの木造超高層建築『W350計画』の実現に向けて取り組み始めていることを発表しています。

住友林業が目指しているのは、高層建築物の木造化・木質化によって「街を森にかえること」。建築物がそこに住む人、暮らす人にとって快適な空間となることで生活圏を繋ぐネットワークを形成し、都市の生物多様性に貢献しようとしているのです。2041年、果たしてこの計画は現実のものとなるのか。ぜひこの目で見たいものです。

木造建築の耐火性や耐震性は本当に大丈夫なのか?

とはいえ、「こんなに巨大な木造建築…耐火性や耐久性、耐震性は大丈夫なの?」と心配される方も多いと思いますが、それは進化し続ける日本の建築技術によって払拭することができるのです。

まず、火災リスクは、開発が進んだ最新の耐火木材によって大きく軽減できるようになりました。ホウ酸系薬剤を含ませた環境配慮型の木材(セルフネン耐火木材)や、石膏ボードで木材を包み、接着剤を使わず高い耐火性能とリサイクル性を両立した耐火木材(環境配慮型λ-WOODⅡ)など、各建築資材メーカーの積極的な開発により進化を遂げています。

さらに、スプリンクラー、防火壁の設置など、火災対策も万全。最新の木造高層ビルは、世界的にも厳しい日本の建築基準を満たし、鉄筋コンクリート造と同等の耐火性を備えています。

もうひとつは、『CLT(直交集成板)』という木製パネルの開発。『CLT』は木の板を繊維方向が直角に交わるように重ねて接着されているため変形が起こりにくく、コンクリートにも匹敵する強度を誇ります。さらに、木と鉄骨を組み合わせたハイブリッド構造や、制震ダンパー、免震構造の導入により耐震性を高めているのです。

かつては「火災に弱い」「耐久性が低い」といったマイナスイメージが先行していた木造建築。しかし、最新技術によってそれらの課題が克服された今、安全性と木のやさしさを兼ね備えた有機的な建物が、これからどんどん街に増えていくのかもしれません。

◆株式会社ヒトカラメディア ベンチャー・スタートアップから老舗企業のオフィス移転、デベロッパーや電鉄会社との不動産開発・ワークスペースの運営などを行っている会社です。”働く”という領域を中心に、いかにして世の中にオモシロい状況を増やせるかを考え、挑んでいます。

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