「ただの精神病持ちの引きこもりだったのが、学ぶことに若さを捧げると決めて、働いたお金で参考書を買って受験勉強を始めて、京都に行き着き、哲学に出会い、友人や先輩後輩に恵まれ、寺に住み込むようになり、今は学ぶことが面白くて仕方ない。学べることの喜びを噛み締める。もっと深くまで行きたい」
現在、京都の同志社大学に通っているunlightenmentさん(@reincarnationus)。所属は社会学部社会学科ですが、哲学を旨とし、独学で哲学を学びながら、知り得た内容をX(旧Twitter)に投稿されています。
お寺に住み込み、友人にも恵まれ、楽しく大学生活を送っているunlightenmentさんですが、以前は精神を病み、引きこもっていた時期もあったそう。それには、いったいどんな事情があったのか。また、そこからどのように脱却したのか。苦しみを乗り越え、幸福を手にするために大切なことについて、unlightenment さんご本人におうかがいし、4回に分けてご紹介します。
陸上競技の挫折と周囲との隔たりから不登校に
「学校に行くのが困難になるほどに精神に変調をきたしたのは、16歳の頃、高校1年生の春休みでした」
unlightenment さんはこのように話します。
きっかけは、当時生活の中心だった陸上競技を、左足首の怪我によって引退せざるを得なくなったことでした。
以来、メンタルはどんどん落ち込み、17歳(高校2年生)の冬頃には、本格的に学校に行けないようになってしまったそうです。
また、引きこもりになった要因として、もう一つ大きな出来事がありました。
高校2年生の終わり、unlightenment さんはASD(自閉症スペクトラム)、ADHD(注意欠如・多動症)という発達障害の診断を受けたのです。
ASDは想像力の欠如やこだわりの強さなどから、社会性や対人コミュニケーションに困難が生まれてしまう、ADHDは不注意や衝動性などの特性から社会生活が差し障りがあるという傾向です。
この診断が下りた時、unlightenmentさんは「安心した」といいます。
それは、以前より周囲の人との間に隔たりを感じていた理由が、ようやく分かった気がしたためでした。
「不思議な人」
「ノリが悪い」
「いけ好かないやつ」
幼少期より、どうしても他者からそんなレッテルを貼られてしまい、いじめなどのトラブルに発展することも度々だったというunlightenmentさん。そんな周囲との間に感じていた違和感と、ASDやADHDの特性とを照らし合わせると、綺麗に辻褄が合い、自分自身の自覚にもつながったといいます。
しかしながら、同時にそれは、「どうやって他の人と関わればいいのだろう」とさらなる不安を覚える要因にもなりました。
「人との距離感や喋り方が分からなくなってしまったんですね。『俺は変なんだ』と自覚したところから、考えて、考えて、どんどん泥沼にはまっていってしまいました」(unlightenment さん)
発達障害は、生まれながらの脳機能の偏りによって起こるといわれています。
つまり、これは生涯付きまとう問題――当時高校生で多感な時期だったこともあり、unlightenment さんは余計に思い悩むようになってしまいました。
不登校の状態は続き、留年ギリギリで高校を卒業。進路も決めていなかったため、フリーターの道を進むことになります。
双極性障害の診断 ベッドで寝たきりの日々へ
そんなunlightenmentさん でしたが、19歳の夏、今度は双極性障害Ⅰ型の診断を受けました。
診断が出た当初、病状はかなり重いものだったといいます。
「夕方散歩に出ると言って家を出たまま、兵庫の実家から東京まで行ってしまったり、駅前で奇声を発して警察に補導されたり、大泣きしながら爆笑したり――。言葉もしどろもどろだったと思います」(unlightenment さん)
自身でも“狂人的”だったと振り返るくらい、激しかったunlightenment さんの症状。
医師よりサナトリウムへの入院も提案されましたが、金銭的な都合により断念、自宅療養を選びます。
しばらくは希死念慮と躁状態の波に翻弄され、外にも出られる状態ではなく、1年ほどの間、ベッドの上で寝たきりの日々を送ることになってしまったといいます。
◇ ◇
まさにどん底の状態だったunlightenmentさん。
ですがその後、転機が訪れます。
次回は、引きこもりから立ち直ったきっかけや経緯について、お話をおうかがいします。
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