お気に入りのアイドルやアニメキャラクターをかたどった〝推し〟のぬいぐるみ「推しぬい」が若い女性を中心に流行している。手作りの服を着せてかばんに付けたり、写真に撮ってSNS(交流サイト)にアップしたりする「ぬい活」が定着。岡山県内でも、撮影場所の貸し出しサービスや手芸グッズの販売などに力を入れる企業が出てきている。
おしゃれな部屋を貸し出すサン・ユーロ(岡山市北区東花尻)。5月末、香川県宇多津町から訪れた会社員女性(21)が一室でぬいぐるみを飾り付けていた。男性アイドルの成長を描くアニメ「アイドリッシュセブン」のキャラクター。その誕生日を祝うため、自身も同じ色の服を身に着け、3時間以上かけて撮影した。
女性は普段からぬいぐるみを持ち歩き、カフェなどで撮影してSNSで公開している。「洋服やリボンで自分だけの推しを表現できるところが魅力」と笑顔で話す。
同店は5年前から、女子会やパーティーなど向けに部屋(1時間1500円から)を貸し出している。月約40組の利用者のうち、好きなアイドルやキャラクターを応援する「推し活」での活用が約9割を占めており、ぬいぐるみを持ち込んで撮影する女性が年々増えているという。
それを受けて同店は昨夏、ぬいぐるみ専用のリボンなどを扱うブランド「#推しのいる」を立ち上げ、店頭やネットで販売している。小笠原沙也加代表は「推しぬい人気を実感している。一緒に出歩いて、デート気分を味わって」と話す。
ブームの背景には「推し活」の広がりがあるようだ。調査会社インテージ(東京)が1月に行ったアンケートによると、推しを持つ女性は15~19歳で75%、20~29歳で65%に上った。その半数ほどは推し活には物価高も影響しないと回答しており、旺盛な需要を取り込もうと、玩具メーカーなどがぬいぐるみを製造。雑貨店で販売されたりクレーンゲームの景品になったりしている。
関連グッズも増えている。アパレルメーカー・ストライプインターナショナル(岡山市北区幸町)の雑貨ブランド「メゾンドフルール」は、ぬいぐるみを入れるクリアポーチ(4950円から)を昨年末からEC(電子商取引)サイトで限定販売している。
赤やピンクなど8色を展開し、推しのカラーに合わせて選べるのが特長。ぬいぐるみを入れ、かばんの外側に取り付けて持ち運ぶ女性が多いという。同社は「推しぬいは2020年以降、SNSの普及とともに急速に広がっており、ニーズに合った商品を打ち出したい」とする。
ぬいぐるみやその服を手作りする人向けに商品をそろえるのは、手芸センタードリーム岡山本店(同市南区新保)。推し活の専用コーナーを設けて、ぬいぐるみのボディー(1375円)や顔のパーツ、眼鏡、靴などを並べる。
売れ行きは好調で、特に10~30代の女性に人気という。田代晴菜店長は「公式グッズがないマイナーな推しを応援する人にも、自分だけのぬいぐるみを作ってほしい」と話している。