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潜伏先で生きる哀愁 「桐島です」主演の毎熊克哉 75歳ベテラン監督の打診に感じた気迫と使命感

石井 隼人 石井 隼人

「何かしらの使命感があると思った」

7月4日公開の映画『「桐島です」』でタイトルロールを演じた俳優の毎熊克哉(38)は、並々ならぬスピード力に目を見張った。

広く届けられる作品に

連続企業爆破事件の一部に関わったとされる桐島聡容疑者が49年間の逃亡の末、本名を名乗り病床で死んだというニュースが世間を賑わせたのが2024年1月末。同年5月にはそれをモチーフにした本作の主演打診が高橋伴明監督からあり、7月には撮影が開始されていたという。

「物凄いスピードじゃないですか。まずその機動力に驚きました。高橋監督は1960年代後半に早大の学生運動で捕まって政治に行かずに映画の道に進んだ。そういった背景も含めて、この題材は俺が撮らなければダメだろみたいな、何かしらの使命感があると思いました。高橋監督は撮影時75歳。年齢を超えた気迫で『「桐島です」』という映画に突き進んでいる印象を受けました」

高橋監督は、三菱銀行籠城事件をモチーフにした『TATTOO<刺青>あり』、連合赤軍を扱った『光の雨』、ホームレス女性殺害事件に材をとった『夜明けまでバス停で』など気骨ある作風で知られる。

そんな社会派が桐島容疑者をテーマに映画を撮る。毎熊は覚悟を持って渡された脚本のページを開いたが…。

「驚いたのは、そこまで政治的ではなかったこと。描かれているのは桐島が潜伏先で淡々と暮らしてる姿で、何かを諦めながら生活し続ける様に妙な哀愁すら感じました。淡々とした中に凄く人間味があって、政治的思想を前面に打ち出さない作風に、これは広く届けられる作品になるのではないかと思いました」

アンチがいるかと…

実在の人物を演じたことはある。だが今回の対象の人生は、あまりにも謎に包まれていた。

「例えば織田信長のような歴史上の人物だったら、研究書や小説など演じる上での手掛かりはたくさんあります。でも今回は逃げ続けた理由も、病床で本名を明かした理由もわかりません。情報量の少ない中で脚本に書かれていることを頼りにフィクションのキャラクターを演じる時と同じように想像して演じることが半分以上はあったと思います。演じる人の解釈によってキャラクター性は変わるだろうし、イメージするのが難しい分、俳優としてのやり甲斐はあると感じました」

とはいうものの、被害者のいる事件に関わった人物を演じることに変わりはない。毎熊自身、批判は覚悟の上で引き受けた。だが反応は意外なもので…。

「犯罪者の映画を作るなんて!と、今の時代アンチが多少なりともいるだろうと想像していましたが、思いのほか批判的なものはほとんどなくて。どんな内容になるのか興味を持ってくださる意見が多かったのがうれしかったです」

観客に期待するのは温故知新。リアルタイムで事件を知らない若い世代にこそ、触れて欲しいと毎熊は願う。

「今の世に何かを伝える作品であってほしいと思っているので、20代30代の若い世代に観てほしいです。自分が生まれる前の日本に何があったのか、知らなかったことに触れて知識を増やして、過去に興味を持ってもらいたい。政治色も強くないので一人の男の青春譚としても受け取れると思うし、友達と映画館で鑑賞して『どうして逃げ続けたのか?』『なぜあのような生き方を選んだのか?』などと考察してエンタメとして鑑賞してもらいたいです」

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