「兄ちゃん、私の匂い、つけて行ってね…銀の匂いを忘れないでね。」
虹の橋を渡り、体が冷たくなった兄猫に寄り添って眠る妹猫の動画がInstagramで話題になりました。
投稿したのは、種子島の山小屋で猫と鶏と暮らす飼い主の「山あり猫あり(保護動物達と暮らす)」(以下、山あり猫あり)さん(@yotsugo_onyans)。兄猫は寅次くん、妹猫は銀ちゃんです。寅次くんが旅立った日、銀ちゃんは別れを惜しむように動かない寅次くんの上に横たわり、そのまま寝てしまったといいます。そんなせつない光景が動画に映し出され、心を打つ人たちが続出。たくさんのコメントで溢れています。
※【「山あり猫あり」さんからのメッセージ】この動画は、寅次の亡骸が映るため、投稿するかしないか悩みました。しかし、銀のこの行動を1人で何時間も見ていて、この世界で私だけでなく沢山の方達に見てもらうことが、ふたりが産まれて来た大きな意味を成すのではないかと感じました。寅次がこの世での生を終えても尚、銀の純粋な愛によってひとりでも多くの方の魂を揺さぶる存在であって欲しいと願っています。
「来世も二人が兄妹として生まれ変わりますように」
「冷たい身体を一生懸命温めてあげて、元気になって欲しかったんだよね…」
「私も同じ経験しました。お兄ちゃんぺったんこになるまで寄り添ってました 今は兄の分まで元気です」
「猫ちゃんの愛情深さ、話せないからこそ、話してるかもしれませんが、思いやる姿は、とても表現できない深い感情がありますね。」
「人より動物達の方が情が厚い涙腺緩みました」
「あまりにも切ない光景ですが、この兄妹の姿を虐待したりする人達にこそ見て欲しい。彼らには心があります」
「来世も二人が兄妹として生まれ変わりますように。ご冥福をお祈りいたします」
多くの人たちの心を打った寅次くんと銀ちゃんの動画。撮影時のことなどを、飼い主さんに聞きました。
まるで兄に寄り添って眠ることはもう明日から叶わないと分かっているかのよう…
──虹の橋を渡った寅次くん。何歳でしたか。
「寅次は、あるお宅の庭周りで繁殖し暮らしていた20匹以上の大家族の中の1匹でした。途中から出会ったので年齢は明確にはわかりませんが…5歳超えたくらいだと思います」
──死因は。
「詳しい死因は分かりませんが、いろんな疾患があったと思います。腎臓が悪いのは確かで口腔疾患も酷かったです」
──妹猫の銀ちゃんが寅次くんの亡骸の上に横たわっていた時の様子をお聞かせください。
「銀はその晩、何時間も寅次の上に横たわり、その小さくなった寅次の身体を労いながら、まるで兄に寄り添って眠ることはもう明日から叶わないと分かっているかのように全身で最後の愛を伝えているように見えました。そのうち寅次の頬に自分の頬を乗せたまま眠りにつきました。私はその様子を見ていて、一番哀しみ寂しさに苦しんでいたのは、私ではなく銀なんだと思いました」
外で暮らしていた兄猫、半身不随になって保護
──寅次くんと銀ちゃんおふたりを保護した経緯は。
「外で暮らしていた寅次がある朝、半身不随になってしまい介護が必要だと思って保護に至りました。初めは寅次だけを連れて帰ろうとして抱き上げましたが、家族全員で行きたいという表現だったのか上半身だけの物すごい力で飛び降りたんです。その後、『じゃあみんなで行こうか!』と話すとすんなり私に抱かれて。それで銀を含め7匹を急きょ山小屋へ段ボール箱にそれぞれ入れて運びました」
──そんな家族を引き連れて保護された寅次くん。どんな猫さんでしたか?
「寅次は、優しく、落ち着いた子でした。寅次より後に産まれた銀たちが安心できる存在だったと思います。どこからか流れてきた野良ちゃんにも、家族同様に顔と顔をスリスリして『ご飯を一緒に食べよう』と優しく歓迎していました」
──今は寅次くんが旅立ってしまいましたが…山小屋での暮らしは。
「現在、山小屋には寅次のファミリーだけを住まわせています。寅次のファミリーは猫風邪を持っていて、他の猫と一緒にできないので、鶏達三兄弟と他の猫たち8匹と、つい先日飼育放棄で保護した犬1匹は、山小屋の設備を整えるまで実家におり、私は実家と山小屋を行き来する日々です。山小屋は寅次がいなくなった後、いまだにみんな寂しそうで、銀は不思議なことに、生前の寅次がしていた行動を真似しています」