今週放送中の連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)第17週「Restart」では、主人公・結(橋本環奈)が管理栄養士の国家試験に向けて猛勉強中。その間、姉の歩(仲里依紗)や、ショッピングセンター建設計画に揺れる孝雄(緒形直人)をはじめとする「さくら通り商店街」の人々、糸島からやってきて神戸の米田家に滞在中のひみこ(池畑慎之介)らにスポットが当たっている。
歩は、窃盗の被害に遭って店じまいを余儀なくされたチャンミカ(松井玲奈)の古着店「ガーリーズ」の閉店セールを手伝い、少しでも店の負債を減らそうと奔走中だ。そんな中、1月29日に放送された第83回ではひみこが店を訪れ、いきなり「あんたら、邪馬台国って知ってる?」と切り出した。その後に続くひみこの台詞が、歩を覚醒させる。
「なんでみんな決めつけたがんのかなあ。邪馬台国はどこやとか、男はどうやとか女がどうやとか、年寄りとか若者とか。もうどうでもええやんなあ。みんな自由やねんやから」
この言葉にヒントをもらった歩は、ひみこにギャルファッションをコーディネートしてSNSに投稿。するとこれが大バズりして、ガーリーズに客が殺到する。さらには、愛子(麻生久美子)、美佐江(キムラ緑子)をはじめ、さくら通り商店街の老若男女を「総ギャル化」させ、SNSで発信して商店街を盛り上げる。
「超越者」池畑慎之介が演じることで広がっていったキャラクター
「好きなことを貫いてる人はみんなギャル」ーー。『おむすび』の底流にあるこの哲学と、ひみこの人物造形について、制作統括の真鍋斎さん、第17週の演出を担当した盆子原誠さんに話を聞いた。
真鍋さんは「ひみこはもともと糸島で暮らすスナックのママという設定だけだったんです。しかし、一種の“超越者”というか、形にとらわれない自由さを体現されている池畑さんに演じていただくことで、どんどん我々のイマジネーションが広がっていきました」と明かした。
邪馬台国の卑弥呼は「ギャルの神様」だった!?
続けて盆子原さんは「ひみこは『あんたらが生まれるずっと前からギャルみたいなことやってきた』、つまり自分が“元祖ギャル”だと言っていますが、僕は、邪馬台国の卑弥呼もいわば“ギャルの神様”だったんじゃないかと思っているんです。忌憚なく喋ってとてもポジティブで、人を前向きにさせる力を持つ女性というのは、太古の日本から既にいたのではないか。それは広義の“ギャル”なのではないか。そんな想像が膨らんで、ひみこのキャラクターに肉付けされていった気がします」と話す。
老若男女の垣根を超える「ギャル魂」
また、ギャルの「定義」について真鍋さんはこう語る。
「ギャルをどう定義するかは人それぞれだと思うのですが、我々作り手としては“ギャル魂”は老若男女の垣根を超えたところにあると思っています。それはファッションなのか、栄養士なのか、はたまた我々のようなエンタメの仕事なのか、いろんな職業に当てはまるのではないかと。男女とか若いとか年寄りだとか、属性の垣根を超えてコミュニケーションを取ることによって、人々が活気づいていく。このドラマの根底には、そんなメッセージ、願いのようなものがあります。その上で、ひみこという存在を、偏見なく世の中のことを受け入れていこうというポジティブさと自由さの象徴として描いています」
さらに、「みんなをギャル化させて『ガーリーズ』と『さくら通り商店街』を盛り上げた83回のエピソードは、歩の歩みのベースとなります。この経験をもとに、歩はどんどんステップアップしていきます」と今後の展開についても触れた。
「多様性」という言葉を使わずに、さりげなく多様性の大切さを差し出してくる。そんなところが『おむすび』らしい。