連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)16週「笑え、ギャルズ」が放送され、今週は主人公の結(橋本環奈)以外の神戸の人たちにスポットが当てられた。
「誰もが主人公。モブなどいない」という作り手の思いが感じられた今週。東日本大震災発災から1年が経ち、被災地に救援物資を送り続けてはいるものの、それだけでいいのかと悩む歩(仲里依紗)の姿があった。歩は、渋谷のギャル時代の友達アキピー(渡辺直美)から、かつて自分が彼女に言った言葉でもある「笑うことの大切さ」を受け取り、再び奮い立つ。
一方、孝雄(緒形直人)や聖人(北村有起哉)をはじめとする「さくら通り商店街」の人々の間では、近くに建設が計画されているショッピングセンターの話題でもちきりだ。顧客流出を食い止め、どうしたら商店街を盛り上げていけるのか、一同は模索する。次週17週も加え、2週にわたって放送されるというこの「イレギュラーな構成」に込めた思いについて制作統括の真鍋斎さんが取材に応じ、語ってくれた。
震災から何年経っても続く、神戸の商店街の困難
「長いスパンで物語を描くことのできる朝ドラは、主人公だけではない、いろいろな人たちの人生とその背景を描けるのがひとつの大きな特徴だと思っています。それをこの2週に集約させて描写する試みをしました。物語はいま、阪神・淡路大震災から17年が経ったところですが、形として街が元に戻ったからといって、それで万々歳というわけではないんですね。これはNHKのドキュメンタリーなどでもたびたび取り上げていますが、震災から何年経っても、神戸の商店街に昔のような活気が戻らない。とても長く困難が続いていることを、取材で知りました。それをこの2週で描いていきます」
第5週で色濃く描かれ、その後も絶えずこの物語の底流にある阪神・淡路大震災。そして第15週で起こった東日本大震災。2つの大きな震災への取り組み方についてたずねると真鍋さんは、
「東日本大震災は、阪神・淡路大震災を経ているということがやはりとても大きいと思っています。取材をしていて、神戸の人たちが東北に支援物資を送ったり、実際に東北の被災地に赴いてボランティアとして活躍した逸話にとても感銘を受けました。その行動に説得力があるんですよね。阪神・淡路大震災で経験したことが、きちんと教訓として残っているからこそ、すぐに行動に移すことができる。そして何より、同じ痛みを共有できる。先の災害のときの教えが、次の災害に活かされる。今後のエピソードにもつながりますが、栄養士という視点から見ても同じようなことが言えます」
大きな災害を経て、人々の意識もバージョンアップしていく
「第15週の佳純(平祐奈)のエピソードに託したように、2011年の東日本大震災では医療チームの一員として栄養士が現地に赴くことはありましたが、栄養士だけのプロジェクトというものはまだ存在しなかった。阪神・淡路大震災を経験し、東日本大震災の際にボランティアとして東北に赴いたという栄養士さんに取材をしましたが、その方は2つの震災を経て、栄養士だけのDMAT(災害派遣医療チーム)のような組織の必要性を強く感じて、実現に向けて活動し始めたとおっしゃいます(※現在、日本栄養士会によりJDA-DAT[日本栄養士会災害支援チーム]が設立され、大規模自然災害時に栄養・食生活支援活動を行っている)。こうした、大きな災害を経ていくごとに人々の意識もバージョンアップしていく姿を、『おむすび』でも描きたいと思いました」
と、今後の展開にも触れた。次週17週「Restart」では、歩と孝雄、そして「さくら通り」商店街の人々が新たな一歩を踏み出す。彼らの奮闘を見守りたい。