リストラ後に転職10社連敗…50代トップ営業マンを追い詰めたプライド「俺の実力を理解していないのか」

長澤 芳子 長澤 芳子

不動産会社に勤めるAさんは、50歳を過ぎたばかりのベテラン営業マンです。今の会社には20年以上勤めており、常にトップセールスの座を維持してきました。

そんなAさんはある日、社長室に呼ばれ「申し訳ないのだが経営不振のため、リストラをおこなうことになった。君はできる営業マンだからほかの会社でもやっていけるだろう。退職金は多めに支払うので準備をしてほしい」と告げられてしまいます。

Aさんには、これまでトップセールスの座を維持してきた自負がありました。自分の実力であればすぐに仕事が見つかるだろうと思い、転職活動を始めます。ただ転職エージェントに相談をすると「年齢的に給与の減少は受け入れていただかないと…」と言われてしまうのでした。

それでもこれまでの実績があるから大丈夫と考えたAさんは、エージェントの返答を無視して、これまで以上の年収が得られる企業に応募を続けました。

しかし現実は甘くなく、10社以上面接を受けても内定はもらえなかったのです。妻は当初Aさんを励ましていましたが、月日が経つにつれ不安と焦りを隠せなくなっていきます。

「もう少し条件を下げてみたら?」という妻の言葉を聞いて、Aさんは苛立ちを覚えます。「俺の実力を理解していないのか」と心の中で叫びたくなるのでした。それでも現実はAさんを追い詰めていきます。

失業保険が支給されるとはいえ、貯金は日に日に減っていきます。徐々に自信を失っていったAさんは、朝起きるのが辛くなり外出も億劫になってしまいます。転職サイトを見ても以前のような意欲が湧かず、家族との会話も減ってしまったため、家庭内の雰囲気は重苦しくなっていました。

Aさんの様子に異変を感じた妻は、Aさんを病院に連れていったところ、医師から「うつ病」だと診断を受けます。医師の説明を聞きながら「もっと早く現実を受け入れるべきだったかもしれない」と後悔するのでした。

Aさんのように年を重ねてから転職をせざるを得なくなった人は、何に気を付けるべきなのでしょうか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞きました。

ー年齢を重ねてからの転職で気を付けるべき点とは何でしょうか?

50代、60代の転職がコロナの時期に増えました。その際Aさんのように10社以上受けても結果が出ない人や、メンタルを病んでしまう人も目にしました。

上手くいかない人の共通点には、転職で自分の利益だけを叶えようとしてしまっているという点があります。たとえば今まで以上の年収が必要であるとか、これだけのスキルをもっているのだからこのポジションでとか、自分の利益の話ばかりする人は上手くいきません。

転職エージェントや企業の話から、客観的な現実を受け入れることも重要です。その上で自分の価値を客観的に構成し、転職先でどのような貢献ができるかを示す必要があります。

例えばAさんの場合、条件に関してご家族の理解もあったので提示された年収を受け入れた上で、ご自身の実力で結果を出すことで年収を交渉していくという選択肢もあったのではないでしょうか。

◆七野綾音(しちのあやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。

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