世間ではパワハラやカスハラなどの被害がニュースとなっていますが、職場での「上司と部下」の関係は、仕事の進め方だけでなく、成長やモチベーションにも大きく影響します。そんな上司と部下の関係について切り込んだ漫画として、漫画家・吉谷光平さん(@kakikurage)がサイコミで連載している『今時の若いモンは』の一部『見込みのない若手への正しい指導の話』がX(旧Twitter)で投稿され、大きな反響を呼んでいます。
会社のバーベキュー会場で、上司の久坊(くぼう)が主人公の麦田に若手社員への指導方法を語る場面から始まります。久坊は「会社の社員は『できる:普通:できない』が『2:6:2』の割合で存在する」と切り出し、パレートの法則(働きアリの法則)を例に挙げて説明を続けます。
パレートの法則とは、働きアリの行動をモデルにしたもので、「20%がよく働き、60%が普通に働き、残りの20%はさぼる」という割合がどの集団にも存在するというもの。この法則を引き合いに、久坊は「下位2割の社員は捨ててもいい」と主張します。
「上位2割のエリートが会社の利益の8割を生み出している。だから、できる人をさらに育てることが最優先だ」と、冷静かつ論理的に返します。麦田は納得できずに食い下がりますが、そのたびに久坊の理屈に押し返されてしまいます。
さらに久坊は、「ゴミ新人」と呼ぶ下位2割への対応について語ります。「下位2割の社員の要求には『どうぞ』と笑顔で応じて、それ以上深入りしないことが一番だ」とアドバイスします。ニコニコしながら放っておく対応が、指導の無駄を防ぐ最善策だと語るの姿に、麦田は強く反発するのでした。
最後まで納得できず悩み続ける麦田の姿には、現実と理想の間で葛藤する社会人のリアルが浮かび上がります。
この漫画に「言い方が過激に聞こえるだけで極論言えば実際これだよね」「今まさにこの問題に直面しています。幾ら丁寧に教えても、次には忘れてる。自分が1で出来る仕事を10以上使って教えてるのに」など現場でのリアルなコメントが寄せられています。そこで同作について作者である吉谷光平さんに詳しい話を聞きました。
-このテーマを描こうと思ったきっかけは何ですか?
きっかけは、担当編集者および取材協力していただいている30〜40代の会社員の方の声ですね。指導すると「パワハラ」と言われるリスクを皆さん日々感じていました。コロナによる分断、飲み会、パーティー、接待のマナーなど、普段の指導でさえ一歩間違えればパワハラの危険があるので、結局何も言えない、何も言わないのが正解になってしまう、と。
もちろん悪しき風習もあるのですが、必要な場面もある。伝えられないもどかしさ、板挟みの苦しさを色んな方からお聞きして「これは描くとおもしろい」「きっと共感してもらえる」と思ったので描くと決めました。
-読者から特に多く寄せられた感想や反応はありましたか?
読者の声は賛否両論、どちらかというと共感の声が多かったと思います。やはり、たくさんの人が悩んでいることなのだと感じました。漫画内の上司のように下は切り捨てるという考えの人が多いとも感じました。
-この漫画を描く過程で、自分の中で変わった考えや新たに見えたことはありましたか?
私自身も悩んでいるテーマなので久坊のように「できない人はあきらめるべき」と思ったり、主人公麦田のように「一生懸命向き合うべき」と考えたり、いったりきたりしています。実はこの続きの話で、麦田の部下は辞職してしまいます。
理由はハッキリとはわからない描写にしたのですが、推測としては「麦田が熱心に向き合いすぎたせい」つまりは「麦田のおせっかい」で部下が辞めるという設定で、ある程度、私の中で着地点は見えてきました。が、正直なところ完璧な正解のない話だと思います。時代も人もひとつではないので。これからの麦田の出す答えを楽しみにして頂けたらと思います。
<吉谷光平さん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/kakikurage
▽今どきの若いモンは 連載サイト(サイコミ)
https://cycomi.com/title/87
▽今どきの若いモンは 電子書籍販売サイト(Amazon)
https://amzn.to/3XX1ahE