AさんはIT企業で働くシステムエンジニアです。現在Aさんは会社をあげて取り組んでいるプロジェクトの一員として関わっており、上司からのプレッシャーを受けながらも夜遅くまで働いていました。
そんな中、同僚のBさんがメンタルヘルスの不調を訴えて休職することになりました。ただでさえ忙しいのにBさんが抜けるのは痛手でしたが、少ない人員でなんとか業務を回すことになります。
なんとか順調にプロジェクトが進捗する中、ひとつ目の大きな山場を超えたAさんたちは打ち上げを開催します。1次会を終え、数人で2次会でクラブに行ったところ、そこにはボーイとして働くBさんの姿があったのです。
「あれ?あいつ休職中じゃなかったっけ?」と思ったAさんは、Bさんに詰め寄ります。すると「休職中に大きな支出が発生したから仕方なかったんだ…」とBさんは答えるのでした。
事情があるとはいえ会社に申告せず休職中にアルバイトをしていたBさんは、何か罰せられてしまうのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞いてみました。
ー休職中のアルバイトは問題になるのでしょうか
問題になることが多いでしょう。そもそも休職とは法律で定められているものではなく、それぞれの会社が内容を決めるものです。一般的には従業員の権利ではなく会社の指示に基づいて、仕事を休むことになります。
そのため休職中のアルバイトを認めるかも、会社の方針次第です。ただ休職は医師の診断書をもとに判断されることが大半です。そこに就業が難しいと書かれているのに隠れてアルバイトをしていたとしたら、嘘をついていると判断されかねません。
会社に許可なく休職中にアルバイトをするのは避けた方がいいでしょう。
ーBさんには何かしらのペナルティが与えられるのでしょうか
休職者は療養専念義務を果たさなければなりません。これは休職期間中は療養に専念し、病気やケガの回復を妨げる行為をしてはいけないというものです。Bさんが療養専念義務に反する行為をしたと判断された場合、懲戒処分の事由になります。
また、休職中に支払われていた傷病手当金は、返還するように求められるでしょう。
労働法の大原則に基づくと、病気やケガで労務が提供できない(働けない)という状況は、会社に対する契約違反となり解雇の理由になりえます。ただそれではあまりにも乱暴なので、解雇の猶予期間として休職が定められています。
休職はあくまでも復職をするための行動です。復職につながらない行動は、規制されると考えた方がいいでしょう。仮に急な支出が必要となった場合であっても、隠れてバイトをするのではなく事前に医師や会社に相談してください。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。