明治を代表する学者は愛妻家で家族思いだった―。「日本動物学の父」と呼ばれる海洋生物学者の箕作(みつくり)佳吉(かきち)(1857~1909年)が米国から妻に宛てた手紙が津山洋学資料館(岡山県津山市西新町)で初公開されている。妻やわが子への愛情が随所ににじむ文面は温かな人柄をうかがわせる。
佳吉は同市出身の洋学者箕作阮甫(げんぽ)の孫で、米国に留学後、東京帝国大理学部で日本人初の動物学教授に就任。研究・教育拠点として神奈川県に三崎臨海実験所を設立したほか、宝飾大手「ミキモト」の創業者で世界初の真珠養殖に成功した御木本幸吉を指導するなど養殖業の発展にも貢献した。
手紙は1897年11月11日にワシントンで書いたとみられ、出張先の暮らしを交えつつ、夫婦の会話や自宅での食事など日本で家族と過ごす日常に思いをはせる。「お前始メ子供皆々身体壮健ニ」と気遣い、「戀(こい)(恋)しき吾妻(わがつま)安子へ」と締め、妻への深い愛情が伝わる。
佳吉のひ孫・重秋さん=東京=が4月、資料館に寄贈した。館内で阮甫が「嘉橘(カキチ)」と記した命名書、佳吉がまとめた教科書など他の寄贈資料とともに常設展示している。
資料館は「欧米文化に親しんだ佳吉ならではの文面。愛情あふれる人柄を感じてほしい」としている。
午前9時~午後5時(入館は同4時半まで)。月曜休館。一般300円、65歳以上・高校生・大学生200円。問い合わせは資料館(0868―23―3324)。