2024年の「上半期タレント番組出演本数ランキング」で321本で1位の澤部佑。漫才コンビ・ハライチとして活躍しており、「ぽかぽか」(フジテレビ系)のMCを務めるほか、単独でのMCも多い。
「澤部」など、「~部(べ)」という名字には2つの由来がある。
1つは部署を意味するもので、今でも会社で「総務部」などとして使う。「服部」(服を織っていた部)という名字はこのパターンだ。
もう1つが「あたり」を意味する「辺(べ)」から漢字が変化したもの。「渡辺」から漢字が変化した「渡部」がこれに当たる。
「澤部」は後者で、「澤辺」から漢字が変化したものだろう。また、「澤」は「沢」の旧字体で、「澤部」とは「沢の辺(あた)り」という意味である。
「沢」とは山の中を流れる渓流のこと。ところが、小学館『日本国語大辞典』をひくと、第一義は「浅く水がたまり、草の生えている湿地。水草の生えている地」とある。つまり、湿地や渓流のことを広く「沢」といったようだ。
今では湿地というとあまり良いイメージは沸かないが、生活の基本であるイネは湿地で育つ。低湿地こそ、生活の基盤となる場所である。
古い時代には山間を流れる渓流は一等地だった。というのも、昔は電気も水道もガスもない。中世以前は商店もなく、自給自足が基本だった。こうした時代、生活に必要な水を調達するのは重労働。今でも地震などで断水すると、とにかく水の確保の苦労するという声が聞かれる。
しかし、沢があればきれいな水を簡単に確保できる。沢の中にはは魚がおり、それを取って食料にすることもできる。また、沢の周りは山である。山に入れば薪の材料となる柴(雑木の枝を切ったもの)を調達できるし、木の実や山菜なども手に入る。
さらに、戦の多かった中世では、庶民は戦が起こると山などに逃げ込んで戦乱を避けた。平野の真ん中にいると逃げるのが大変だが、沢に住んでいれば裏山に逃げればいい。まさに「沢」はすべてがそろった場所で、庶民にとって住むには一等地だったといえる。
「沢部(澤部)」とは、こうした一等地の「沢」の周辺に住んでいた人が名乗ったものだ。
因みに、澤部佑の曽祖父は、茨城県下妻市の初代市長・澤部元信。名家の出でもある。