物価上昇や金利上昇、可処分所得の減少などで働く環境が厳しくなった人もいるでしょう。その結果、住宅ローンの支払いが厳しくなったという人の声も少なくありません。実際に住宅ローンの支払いが厳しくなった場合、問題解決の方法はあるのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの高田充史さんに聞きました。
ー住宅ローンの相談をする人はどのような人が多いですか?
子どもがいる若い世帯の人が多いように感じます。例えば先日ご相談いただいた例でいうと、関西で3LDKのマンションに住む4人家族です。ご主人は40代で大阪市内のIT企業に勤める会社員で、奥様は子供を保育所に預けてパート勤務をしていました。お子さまは上の子が6歳で下の子が2歳という家族構成です。
ーどうして住宅ローンの支払いが難しくなったのでしょうか
ここ数年の金利上昇が大きな理由です。先の例に出した人は変動金利で住宅ローンを借りていたのですが、購入時と比べて約0.3%ほど金利が上昇していました。話を聞いたところ、購入した時点でギリギリ返済していけるというレベルでローンを組んでしまったため、0.3%の上昇によって毎月の返済を負担に感じるようになったそうです。
さらに物価上昇によって、毎日の食費をはじめとする生活費全般が上がってしまっているのも原因でした。
ー相談を受けてどのような解決策を提案をされたのでしょうか
まずは家計の見直しです。日常的に使っている支出を分析し、削減できるものは無いかを洗い出します。この人のケースでは、スマホや家でのネットなどの通信費見直しや、あまり使用していないサブスクサービスの解約が有効でした。
しかし、それでもまだ解決する程の節約には至らなかったため、次は収入を増やす手立てを考えました。奥様がパート勤務をしているので、勤務時間を増やすかもっと給料を増やせる仕事に変更するかを提案したのです。
ーその提案に対しての相談者の反応はいかがでしたか?
支出の削減についてはすぐにでも取り組めるということでしたが、奥様の仕事の見直しは難しいという返事でした。今の仕事場は子育てをしながらの勤務にありがちな突然のトラブルに対して融通が利くため、変わりたくないとのことだったのです。
ーほかにできる手段はあるのでしょうか?
借入先の金融機関に相談することを提案しました。返済プランの見直しができれば、一定期間の返済の猶予や返済期間を伸ばすことで、月々の支払額が軽減できるからです。
この人の場合は借入先への相談が成功し、月々の支払額を抑えることができ、家を手放さずに済みました。もしも借入先に相談してもどうにもならない場合には、家を売却しなければならなかったかもしれないと考えると、危ないところだったと感じています。
受託支援機構が2024年8月29日に発表した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、約2割の人が借入れ当時と比べた住宅ローン返済の負担感が「大きくなった」「やや大きくなった」と返答しています。また住宅ローン返済にあたって不安に思っていることとして「借入金利の上昇」が最も多く回答されています。
また、借入当初は大丈夫だと思っていても、実際に返済が始まると予想外のことも起こる場合もあります。もしもローン返済に少しでも不安を感じたら、早めに金融機関や専門家に相談しましょう。
◆高田 充史(たかだ・あつし)株式会社Erwin 代表取締役。独立系FP法人として「マイホーム購入の相談窓口」と「マネープランの相談窓口」を運営。住宅購入の資金契約や住宅ローン比較診断、ライフプラン作成など主に個人の資金相談を専門として、対面とオンラインで過去1000件以上の相談件数を積み重ねている。