電車の発着時刻や遅延情報の他に、今から出発したら次の電車に間に合うのか。仮に間に合うなら歩いても余裕があるのか、それとも急いだほうがいいのか…。そういった感覚的な情報までも提供してくれる運行掲示板が、大阪電気通信大学の講義棟に10月半ばから設置された。
SNSにも投稿され「さすが電通大」「すごく助かる」などの反応が寄せられている。実はこれ、同大学の学生2人が自作したもので、制作費も1万円前後だという。制作した学生、山﨑悠斗(はると)さんと小河子竜(しりゅう)さんに話を聞いた。
「学生に役立つものを作りたい」→発想から4週間で完成
大阪電気通信大学(以下、電通大)は、京阪電車・寝屋川市駅から東へ15分ほど歩いた場所にある。山﨑さんと小河さんは、ともに電通大の情報通信工学部情報工学科で学ぶ3年生で、プログラミング研究会に所属している。プログラミング研究会はプログラミングの研究はもちろんのこと、勉強会を開いたり、ゲームを作って販売したりするなどの活動をしているそうだ。
2人が制作した運行掲示板は、寝屋川市駅を発着する電車の時刻データを読み込んで、さらに「歩いても間に合います」「早歩きなら間に合います」という独自のメッセージも表示されるようにプログラムが組まれている。
ユニークかつ便利なシステムだが、発案のきっかけは何だったのだろうか。
「学生に役立つものを作りたいという想いがありました」
同じサークルのメンバーと話したときに、いま大学を出たら電車に間に合うのかをスマホなどでいちいち調べるのが面倒で、しかも駅に着いたときに電車が遅延していることもある。時刻表や遅延情報などを自分で調べなくても、前もって知らせることができたら役に立てるのではないかと考えたそうだ。
8月の終わり頃から作り始め、9月の終わり頃には完成。10月に講義棟の1階に設置して稼働し始めたという。
この運行掲示板が一風変わっているのは、たんに寝屋川市駅を発着する電車の時刻表示にとどまらず、「あと16分 歩いても間に合います」「あと11分 走れば間に合います」などのメッセージを表示させたことだ。
「最初は『何分後』みたいに時間だけの表記だったんです。でも何分後って分かっても、間に合うのか、どれぐらい急いだらいいとか、お手洗いに行く時間はあるのかといった判断に迷います。そういったことを直感的に分かりやすくする方法を考えたときに、自然と出てきたアイデアでした」
ちなみに「歩いても間に合う」「走れば間に合う」の基準を設けるために、実際に駅まで歩いたり走ったりして実測したという。
「信号も考慮に入れて、走ったら6~7分。歩いたら15分くらい。そこに少し余裕をプラスしている感じです」
電車の運行時間は、京阪電車のネット情報を読み込むシステムになっている。京阪電車へは大学を通して許可を願い出たところ、快諾してくれたそうだ。
「走れば間に合う」の表示を見て本当に駅まで走った人がいるかどうかは定かではないそうだが、学生のみならず大学の職員からも「便利で助かる」と声をかけられたことがあるという。
制作費は1万円程度…全て市販されているパーツ
ところで、この運行掲示板は驚くほどお金をかけずに制作されている。情報処理を行う心臓部には、イギリスで開発されたマイクロコンピュータ「Raspberry Pi」(略してラズパイ)が使われているが、数千円で手に入るという。モニターを組み合わせて、総制作費は1万円程度だったとか。それを動かすプログラムは、もちろん自分たちで書いた。設計で最も難しかったのはそういったプログラミングよりも、表示する文字のフォントや大きさなどのデザインだったそうだ。
「駅の掲示板によく使われてるようなデザインの方が見慣れているし、視覚的に分かりやすいですね。それに文字が詰まり過ぎたら見づらいですから、文字間のスペースも工夫しました」
設置されてまだひと月ほどだが、さっそく大きな改良を施したという。完成した当初は「走れば間に合う」と表示していたメッセージを「早歩きなら間に合います」という表現に変えた。
「X(旧Twitter)で『走ったら危ないのではないか』という意見があったので変えました。たくさんのご意見をいただいているので、今後も改善していきます」
山﨑さんも小河さんも、将来はIT関連の道へ進みたいという。今後も世の中のために役立つ仕事をしてくれることを期待して、電通大を後にした。
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【プログラミング研究会@大阪電気通信大学】のXアカウント