近鉄24年ぶりの新型一般車両8A系に、大型荷物用スペース「やさしば」…使い心地は? スーツケースを持ち込んでみたら…これはイイ!

新田 浩之 新田 浩之

2024年10月7日、近鉄の新型一般車両である8A系がデビューしました。8A系には、令和時代の通勤電車らしい新しい試みが取り入れられています。その一つが、ベビーカーや大型荷物に対応する「やさしば」と呼ばれるスペースです。この「やさしば」の使い勝手を確認するため、実際にスーツケースを持ち込んで8A系に乗車してみました。

24年ぶりの新型一般車両8A系が誕生 

近鉄では、24年ぶりとなる新型一般車両です。奈良線、京都線、橿原線、天理線で運用を開始しました。

8A系の車内には、扉の間にロングシートとクロスシートの切り替えができるL/C(デュアル)シートが設けられています。また、1車両に2箇所ずつ、ベビーカーや大型荷物に対応するスペース「やさしば」が設置されています。

「やさしば」は、ベビーカーや大型荷物を持った乗客をはじめ、すべての乗客と「やさしさ」を共有できる空間です。この「やさしい場所」と、緑色の芝生のデザインを掛け合わせて「やさしば」と名付けられました。「やさしば」の設置は近鉄初の試みであり、全国的にも非常に珍しい取り組みです。

そのほか、バリアフリー設備として、車いす利用者に対応したフリースペースが各車両に1箇所設置されています。

スーツケースを手ぶらで置ける「やさしば」

大阪難波〜近鉄奈良間を8A系で往復しました。時間帯は平日の昼間で、往路は快速急行、復路は急行です。なお、往路・復路ともに座席配置は全席ロングシートでした。編成は8A系4両と在来車両2両の6両編成です。なお、8A系は阪神線や京都市営地下鉄線には乗り入れていません。

「やさしば」は中間部の扉付近に設置されています。持ち込んだスーツケースは3辺合計110cmの国内出張用サイズで、椅子と扉の間に収まりました。今回は小型のスーツケースだったのですが、これよりも大きなスーツケースでも問題なく置けそうです。

またこちらの特徴は、ストッパーが付いている点です。このストッパーにスーツケースのキャスターを一つ入れることで、スーツケースが動かなくなります。つまり、スーツケースの取っ手を常に手で押さえておく必要がなく、スーツケースを持っていても手ぶらで過ごすことができるのです。

「やさしば」の座り心地は良く、ドア上部の案内表示器も非常に見やすいです。また、座席に座ったまま体の向きを自由に変えられるため、使い勝手の自由度も高いと感じました。

車内では、ベビーカーを持った方が「やさしば」を利用しており、ベビーカーをスペースに置いたまま、スマートフォンを気兼ねなく操作していました。このように、「やさしば」は子育て中の利用者にも休息の時間を提供する、現代社会に適した設備と言えるでしょう。

一方、大阪〜奈良間という路線特性からか、平日の昼間でもスーツケースを持った訪日観光客が多く見受けられました。前述の通り、「やさしば」は1車両に2箇所しかないため、数が足りないと感じました。しかし、すべてのドア付近に設置するのは難しいと思われ、最終的には乗客同士の思いやりが大切になるでしょう。

実際にスーツケースを持ち込んでみたところ、「やさしば」は非常に使いやすく、スーツケースを気にせずに大阪難波〜近鉄奈良間の約40分間の旅を快適に楽しむことができました。

今後の8A系の増備計画について、2024年度中には奈良線、京都線、橿原線、天理線に計48両が、2025年度には大阪線、名古屋線などにも投入される予定です。つまり、「やさしば」を目にする機会が増えるということです。

一方、現時点では在来車両に「やさしば」を設置する計画は発表されていません。一利用者としては、ストッパーだけでも設置してほしい、というのが本音です。

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