大阪府内のアパレルショップで働いているAさんには、付き合って3年になる彼氏Bさんがいます。先日Bさんからプロポーズされたのですが、Aさんは「少し考えさせてほしい」と返事を保留していました。
Bさんは府内のIT企業に勤めている5年目の会社員で、社内でも高い評価を得ています。先日も大きなプロジェクトを成功に導き、社内で表彰されたそうです。このように有能に見えるBさんなので、結婚相手としては間違いないように思えるのですが、Aさんには一抹の不安がありました。
というのも一緒に飲食店に行くと、Bさんはいつも大量の紙ナプキンを持って帰るのです。
付き合った当初は数枚を持ち帰るだけだったのですが、最近ではテーブルに置いてある紙ナプキンを全てカバンに入れて持ち帰るようになったのです。Aさんが「みっともないから止めなよ」と言っても、「これでデスク周りを拭くと綺麗になるんだ」と言って聞く耳を持ちません。
Aさんはいつか店員に見つかって、注意を受けるのではないかとドキドキしています。Bさんの行為は犯罪にならないのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
ー紙ナプキンを大量に持って帰ると罪になるのでしょうか
飲食店で紙ナプキンが置いてある理由は、飲食の際に口や手を拭くためであり、持って帰って使ってもらうためのものではないでしょう。したがって量の多い・少ないに関係なく、厳密にいえば窃盗罪に該当すると考えられます。
紙ナプキンではありませんが、過去に商業施設に設置してあるトイレットペーパーを持ち帰った人が逮捕されたというケースも存在します。
ー罪になるのであれば、どれくらいの重さになるのでしょうか
窃盗罪が適用されれば「1か月以上10年以下の懲役」または「1万円以上50万円以下の罰金」が科せられます。ただし犯罪として刑罰を科すに値する程度の実質的違法性があるかを考えなければなりません。これを可罰的違法性といい、紙ナプキン1枚や2枚であれば刑事罰を科すほどではないと判断されるかもしれません。
ただ1度に大量に持ち帰ったり何度も持ち帰りを繰り返したりしていると、逮捕される可能性は十分にありえます。
ーBさんの行為を黙認したらAさんも共犯になるのでしょうか
もしもBさんの行為を手伝う(ほう助)か、Bさんを唆して(教唆)紙ナプキンを持ち帰らせている場合は間違いなく共犯となります。しかし黙認だけでは共犯とはならないでしょう。
AさんはBさんの行為を止めようとしているため、ほう助にも教唆にも当てはまりません。そのため、Aさんが共犯者として罪に問われることはありません。
このままBさんが紙ナプキンを持ち帰ることを辞めなければ、いつか逮捕されるかもしれません。AさんはBさんに対して犯罪行為であることを指摘し、改善されないのであれば結婚は考え直した方がいいかもしれませんね。
◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。