都会の夜空でも、見事捉えた星の光跡 初心者が挑んだ「天体撮影専用カメラ」の驚きの実力

襟川 瑳汀 襟川 瑳汀

都市部の夜空にも星はたくさんある。カメラはきちんとその光を捉える

 月の次は、いよいよ星を撮ってみることにしよう。天体写真と聞いてだれもがすぐに連想するのは、星の軌跡が流麗な弧を描くあれだろうと思う。あれを撮ってみよう。

 私は「カメラを三脚に据えて、シャッターを長時間開けていればいいんだろう」と気楽に考えていたのだが、これはとんでもない間違いであった。というのも都市部の夜空は街灯やらネオンサインやらで想像以上に明るくて、ものの数秒もシャッターを開けたら画像は白く飛んでしまうからである。

 困ったなあ、こんな高級カメラを借り出しておいて「撮れませんでした」じゃ済まないぞ。そう思って調べると、どうも星の軌跡を撮るには「ライブコンポジット」という機能を使うのが鉄則であるらしい。これは複数回撮影した画像の、明るく変化した部分だけを合成する機能で、一般名称としては「比較明合成」という。ただシャッターを長時間開けているだけでは、上掲写真のごとく白く飛んでしまうことが避けられない。だが、ライブコンポジットを使えば画像は雰囲気のある暗さを保ったまま、星の光跡を捉えることができるのだ。

 初めてライブコンポジットで撮影した写真が下である(写真が表示されない場合はぜひ『まいどなニュース』のほうにお越しいただきたい)。

 この晩はやたらと自衛隊機や旅客機が低い位置を飛んで、その軌跡が画像中央に写り込んでしまっている。雲も出てきて、画面の1/4近くを覆った。天体写真としては失敗だろうが、それでもこの写真を確認したときには大げさでなく感動した。ああ、テクノロジーの進歩というものは大したものだ。手順さえきちんと踏めばおれみたいな素人でもこういう写真が撮れるのだ…。

 感動とは別に驚きもあった。夜空にはこんなにもたくさん星がある、それは都市部では肉眼では見えづらいけれど、カメラはきちんと写し出すのだという驚きである。よく見れば赤い星は赤く、青白い星は青白く、そして円弧の中心を辿っていくと北極星まで(つまりは針で突いたほどの「点」である)アストロはその光を捉えているではないか。

地球は、想像以上の早さで自転している

 星を「点」で撮ることにも挑戦してみよう。

 星に露出を合わせるとシャッタースピードが遅くなり、(特に都市部では)画面が全体的に白く飛ぶ。夜の雰囲気を保った状態で撮ると光量不足になり、星はほぼ写らない。このあたりのバランスをどう取るかについてはいろいろと試行錯誤はしたのだが、やはりライブコンポジットで解決することにした。

 やりかたは簡単だ。アストロをライブコンポジットのモードにしてシャッターを切る。5秒、10秒と経つごとに背面の液晶モニタにはゆっくりと星が浮かびあがってくる。その星が線として流れてしまう前に適当なところで撮影を終える、それだけである。

 そうやって撮ったのが下の写真である(もう何度めかの注意喚起であるが、写真が表示されない場合はぜひ『まいどなニュース』のほうにお越しいただきたい)。

 星をなるべく明るく写すためには、ライブコンポジットの時間を長く取ったほうがいい。だが、これはマウントするレンズの焦点距離にもよるのだが、60秒も撮っているともはや星は点ではいられず、線となって流れ出す。地球は、想像するよりもずっと早いスピードで自転しているのだ。

 この点と線の松本清張的ジレンマを解決するには、赤道儀というハードウェアを追加購入する必要がある。それさえあれば星はもっと明るく、しかも動きを止めて撮ることができるのだ。もちろん私はそんなものは持っていない。読者諸賢におかれては「襟川にもっと高い原稿料を払ってやれ」と、まいどなニュース編集部に陳情していただければ幸いである。

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