「盗撮されているんじゃないか…とトイレで不安に」車椅子生活で実感 “男女共同の多目的トイレ”に警鐘「性犯罪の温床にも」

宮前 晶子 宮前 晶子

「多目的トイレも男女別にしてほしいんすよ。怪我して車椅子生活してた頃、病院では女性トイレの中に、車椅子用のトイレスペースがあった。共有の多目的もあったけど、男性用トイレの中には男性用車椅子のトイレスペース、女性用トイレには女性車椅子の…とあるべき」

男用はあれど女性用はなく男女共用のみだったり、性自認女性はどちらを使用すべきなのか…など公共空間のトイレのあり方にはさまざまな声が挙がっています。体の不自由な方、介助を必要とする方のために設置されている多目的トイレについても然り。

“多目的トイレの男女別設置”を訴えるみずさん(@mizutayou1)は、車椅子の利用をきっかけに強く願うように。性犯罪の温床にもなると警鐘を鳴らすみずさんに、詳細を聞きました。

車椅子利用で実感、女性専用のありがたさ

「子供の頃、車椅子を使う同級生がいて、一緒に移動教室で階段の上がり下がりをしたり掃除の時間に大変だったりしたのをそばで見ていたので、車椅子で生活することの厳しさは理解していたつもりでした。でも、私自身が怪我をして車椅子を使うことになって、何もわかっていなかったんだと思うことが多々ありました」。

車椅子に座ると、視点が低く、世界が巨大に見え、怖さを感じるなど日常的にストレスを感じることの連続だったそう。トイレへの入室、使用するのはもちろん、中でぐるっと回るためにはスペースが広くないと大変なことなど、ひとりでの困難を実感。介助する人がいた場合、その人のスペースも必要になることもわかりました。

「手術をしてすぐに、看護の方のお手伝いありで用を足しに行きましたが、次からは1人でできそう、ということで看護の方のお手伝いはなくなりました。それが決まった時、“自分ひとりで用を安全に足すことができる”ことに心底ホッとすると同時に、私にとって自尊心を保つことになるんだと気づいたんです」とみずさん。

そんななかで、男女共用の多目的トイレを使った際は、「盗撮の不安や、いつも以上に時間がかかるけど次に男性が待っているかもしれないと思うと焦る気持ちがありました。それからは、女性専用があるとしみじみありがたさを感じるように」と振りかえります。

性犯罪の温床という一面も

「サニタリーボックスの中身を持ち帰るという性癖の人もいるので、男女共用のトイレのサニタリーボックスに使用済みの生理用ナプキンを捨てることをためらう女性もいますが、女性専用なら安心できます」。

男性の入室を制限することで、そういった不安や、盗撮の可能性を減らすこともでき、侵入した場合は、通報や注意喚起を行えるのは大きな利点です。

「共用の多目的トイレに女性や子どもを連れ込み、加害する事件や盗撮事件は多発しており、犯罪の温床になる現実があります。女性専用にすることで、車椅子の女性や子どもを狙う性加害の阻止にもつながると思うのです」とみずさん。

ことあるごとに“女性用トイレの中に女性用の多目的トイレ、男性用トイレの中に男性用多目的トイレの設置を”とSNSで発信するなか、必ず出てくるのは「異性介護の人の場合、男女別にすると困る」という意見です。

冒頭の投稿に対しても、「異性介助もあるから」というコメントが寄せられました。みずさんは、「異性介助についても喫緊に取り組むべき問題です。同性介助が徹底され、同性で専用のトイレに行く方が圧倒的に良いはずです。それなのに、人手が足りないから、やむを得ず異性介助となるケースも。人手不足は、別の原因があり、その問題解消をすべきです。けれども、結局、日本では弱い立場の人に我慢させている。そうやって成り立っているものが多いのではないでしょうか」と問いかけます。

本来であれば同性介助が介護の基本といわれています。厚生労働省とこども家庭庁による「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」では、「本人の意思に反する異性介助がなされないよう、サービス管理責任者等がサービス提供に関する本人の意向を把握するとともに、本人の意向を踏まえたサービス提供体制の確保に努めるべき旨を障害福祉サービス事業等の指定基準の解釈通知に明記」と記されています。

ただ、「夫が妻、妻が夫を、娘が父をというケースも多い」と家族間での介護であれば同性介護が難しい声も指摘され、その状況に対しては男女共有にするのではなく「男女別に加えて、だれでもトイレがあれば」と「何かを削って埋めるのではなく、増やすの!」という声もありました。

男女別だったのに、男女共有への改修も…

みずさんが公共のトイレについて考えるようになったのは数十年前のこと。今では当たり前に設置されていますが、当時の女性用トイレには赤ちゃん用のベッドが置かれていることは少なく、行政へ働きかけたことも。

このことをきっかけに女性用トイレに注目すると、女性の意見を反映させている女性用トイレは少なく、不便に感じる点が多々あること、それゆえ我慢することも多いことが見えてくるようになり、多目的トイレもそのひとつでした。

「多目的トイレが男女共同のままなのは、経費がないから、男性は困らないから、男女別にしなくても社会は回っていくから、などの理由だと思います。この問題の根本には女性蔑視、女性差別があるのでは?」と訴えます。

東京や大阪の主要駅や公共施設、商業施設などの多目的トイレの設置状態を調べてみたところ、大阪メトロでは男女別に多目的トイレを設けている駅はあるものの、男女共用の多目的トイレが大多数。横浜高速鉄道株式会社の「みなとみらい線」が男女別に設けて注目を集めたこともあったため確認をとったところ、「どんな人でも、男女関係なく、利用できる」という国のガイドラインに沿って、男女共用に改修を進めているとのこと。みずさんも、そのような改修の現実を目にしていると言います。

「人はいつどんな状況になり車椅子生活になるかわからないのに、車椅子の生活があまりに蔑ろにされているのではないか、高齢化が加速し、車椅子の人が増える今後に向けて、一刻も速く男女別の多目的トイレが常識となれば。性犯罪を未然に防ぎ、一人ひとりの自尊心のためにも男女別の多目的トイレが当たり前の世の中になって欲しい」。みずさんのように願う人は多いのではないでしょうか。

■みずさんX(旧twitter)@mizutayou1

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