情勢見通せぬ「自民党総裁選」世論とズレる議員支持、立候補9人の長所と短所【豊田真由子が解説】

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

各候補者の状況や人となりは?

各候補の経歴や強みに関する報道は多くなされていますので、ここでは、各候補のウィークポイントや、永田町でわたくしが直接関わっての印象等を、考えてみたいと思います。

<小泉氏>

以前から世論の支持が高く、若く“刷新感”の高い小泉氏に勢いがあると言われましたが、議員の中には、不安視する声や、恵まれた境遇や“キングメーカー”菅氏からの小泉氏支援圧力に対する反発も少なからずあり、それらが顕在化する可能性もあります(そうならず、多数の議員が“長いものに巻かれる”可能性ももちろんあります)。

連日候補者同士で行われる論戦の中で、例えば小泉氏が掲げた「解雇規制の見直し」に関する軌道修正や、外交では金正恩北朝鮮総書記やカナダのトルドー首相と「同年代だから話ができる」と強調するなど、「いや、そこじゃない··」「もっと具体的方策を」とツッコミの入りそうな場面も散見されます。

小泉氏は、独特の強力なオーラで人を惹きつける力があり、東日本大震災後、毎月必ず11日に党青年局長として福島を訪れ、2012年当時、青年局メンバー(若手議員)はこぞって同行したがり、小泉氏の行くところ、メディアも地元の人も殺到する、という感じでした。あまり腹を割って人と付き合わない、とも言われていましたが、党内もメディアも、皆が特別扱いをしてきており、それと内実が伴ってきているか、の真価がまさに問われている、ということかと思います。

<石破氏>

石破氏は、地方創生や国防への熱意もあり、党員·党友には以前から抜群の人気がありますが、いかんせん、議員票が伸びません。推薦人の中に、岸田派、麻生派、茂木派、安部派からゼロであることを見ても、過去の様々な遺恨(例:1993年の離党や「麻生降ろし」のきっかけを作った等)が相当根深いことを感じさせます。

石破氏は、実直だが、その場に応じた立ち居振る舞いが苦手で、よくもわるくも不器用な方なのだろう、と思いました。女性議員の会合のゲストでいらしたときは、お茶目な感じでしたが、永田町的な仲間作りや社交が苦手、ということで、たしかに石破派は途中でなくなってしまいましたが、親分として担ごうとした人たちが一定数いたということは、やはり何かを持っている方ではあるのだろうと思います。

今回、党員·党友票の重みが増していることは有利に働きますが、決選投票に残り、その上で、議員内での不人気·遺恨を、どう克服できるのか、最後の総裁選(石破氏自身の弁)の正念場です。

<高市氏>

高市氏は、政策に強いとされ、いわゆる“岩盤保守層”の強固な支持を得ており、党員·党友の票を集めるところが強みですが、一方、党員·議員とも保守系以外への広がりや、女性の支持が期待されたほど高くない、といったところをどう克服するか、そして、前回、強力な後ろ盾であった安倍元総理不在で議員票をどこまで動かせるか(今回の推薦人も安倍派からが多く14人)、といったことがポイントになってくると思います。

いわゆるジェンダーイシュー等に関して、岩盤保守の方々は強固な思想信条に基づくので、強い主張で声が大きく感じられる一方で、社会にも自民党内にも、実は「『そこは別に認めてもいいと思うんだけど··』と思っているが、声を上げにくいから黙っている」というサイレント層が相当数存在している、というねじれ問題があります。伝統を守りつつ、時代と価値観の変化にどう適切に対応していけるか、もトップに求められる資質だろうと思います。

高市氏が政調会長のときに、私もメンバーとなって「女性の健康問題」についての提言を党でまとめたときなども、よく声をかけていただき、高市氏や野田聖子氏は、(女性先輩議員には珍しく)、後輩を気にかける方々と思います。

いわゆる「永田町的な人付き合い」は得意ではないとされますが、総裁選の在り方も大きく変わってきている中で、上川氏含め、“ガラスの天井”を打ち破れるかという点は、やはりひとつ注目ポイントかと思います(「女性かどうかではなく、実力で見てもらいたい」という主張は、もちろんよく理解・同意します)。

<小林氏>

小林氏は、オールマイティ感強く、経済安全保障分野などで頭角を現し、「新たなホープを担いで、世代交代で古い政治·自民党を変えたい。」という中堅・若手の熱量で今回押し上げられました。一方で、自派閥含め、ベテラン議員からの支持不足や、そして知名度や経験不足の点から、党員・党友票が足りません。若いのに意外と固い、と見えてしまうところも気になります。

今後経験を積んでいき、「今回ダメでも、今後の若手の一大勢力に」という期待もある一方で、現在小林氏を推しているメンバーの中には、世襲だが実力もあり「我こそは未来の総理·総裁」と自他ともに考えてきている議員が何人もおり、「政界は一寸先は闇」であることを考えれば、将来的にも、このまま小林氏を担いで、派閥のように強固なつながりで集団が続いていくとは限らないと思います。

私は、役人時代、米ハーバード大学院の留学が小林氏と同時期で、氏の妻は中高大の後輩です。政界の魑魅魍魎をまとめる凄みが不足といった指摘もありますが、今回はまだ早いとしても、日本の政界においても、「世襲でもカネでも後ろ盾の力でもなく、能力と血の滲むような努力によって、正当に評価されるということが、ちゃんと起こり得るのだ」ということの証として、この先も潰されずにがんばっていただきたいと思います。

<他の候補>

字数の関係で短くなりますが、林氏(推薦人は岸田派から15人)、河野氏(麻生派から18人)、茂木氏(茂木派から14人)は、自派閥を中心にした支持となっており、一方で、派閥が割れた上川氏(岸田派から5人)と加藤氏(茂木派から5人)は、他派閥や無派閥から広く推薦人を得る形となっています。

私は、これらの候補者の中にも、現在の順位は決して高くないけれど、能力·経験豊かで国を担う力のある方々がおられると思っています。ただ、国民からは実際が見えにくく、権謀術数渦巻く永田町では、なかなか、そういうことで評価されるとは限らないんだよな、難しいな···、と思います。

――――――――――――――――――――――――――――

以上、総裁選の見通しや各候補の状況について、ざっと考えてみましたが、そもそも、国民の方々の中には、「『政治とカネ』の問題が、ちっとも解決していない」、「“表紙”を変えればごまかせる、というのはどうなのか」といった声もあり、次回は総理·総裁にふさわしい資質、政策の中身、国民目線で見た問題点等について、考えてみたいと思います。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース