情勢見通せぬ「自民党総裁選」世論とズレる議員支持、立候補9人の長所と短所【豊田真由子が解説】

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

自民党総裁選の報道が連日加熱しています。総裁選は、事実上、日本の総理を選ぶ選挙であり、すべての国民に影響を及ぼす重大事ではあるのですが、一方で、国民の方々には「『政治とカネ』の問題はどうなった?」「“表紙”を変えた勢いで、解散·総選挙で勝利!でいいの?」「斬新な政策案も出てるけど、ほんとにやれるの?」といったモヤモヤ感もたくさんあると思います。

外からは見えにくい実態も含め、総裁選の行方や課題、国民不在になっていないか?そして、各候補者の状況や、わたくしが永田町で直接関わった候補者の方々の人となり等について、考えてみたいと思います。

なお、本稿では、派閥の力学について言及していますが、あくまでも、現実の問題として今回の総裁選でこういった形で機能しているということの説明であり、派閥の是非に関する論点に関するものではありませんことを申し添えます。

【ポイント】
・現時点での情勢調査の結果と見通し
・支持先はどうやって決まる?
・各候補者の状況や人となりは?

現時点での情勢調査の結果と見通し

先週末(9月14~15日)に行われた各種メディアの調査結果はおおよそ以下のようになっています。(調査によって、数値に相当ばらつきがあります。)これは、第一回目の投票に反映される数値になります。告示後論戦が始まってから、多少順位に変動が見られるようです。

<国会議員票>
小泉氏、小林氏:40~60人前後
林氏、茂木氏、石破氏、高市氏:30人前後
河野氏、上川氏、加藤氏:推薦人20人からの上積みを目指す

<党員・党友票>
調査によって異なりますが、石破氏、小泉氏、高市氏が、それぞれ3~2割、上川氏、小林氏が7~5%、林氏、河野氏、茂木氏、加藤氏が5~4%

上記を加味すると、国会議員票と党員·党友票を併せると、現時点での第一回投票での得票予想数は、石破氏、小泉氏、高市氏が、それぞれ130~110票ほど、小林氏70~60票、林氏、茂木氏、上川氏、河野氏、加藤氏が、それぞれ50~40票、そして、未定·未回答が120~60票となります。国会議員票も党員·党員票も、動向不明が相当数ありますので、情勢は変わる可能性があります。

「世論の人気」と「党員·党友の人気」と「国会議員の評価」と「国会議員の支持先」には、ズレがあり、ここに総裁選の難しさがあると思います。「国会議員の評価」と「国会議員の支持先」のズレ、というのは、例えば、A候補の能力を評価しているが、上からの圧力でB候補に投票するとか、「国の顔」としてはC候補が良いと思うが、「選挙の顔」を考えてD候補に投票するとかいったことです。

どの候補が決選投票に残る2名となるのか、そして、決選投票で他候補を支持していた議員がどう動くかによって、最終的な結果はまだ見通せません。

支持先はどうやって決まる?

従来の派閥による事前調整や、厳しい締め付けがなくなった結果、若手や、同じ派閥や地域から複数、計9名が出馬するといった、これまでの総裁選には見られなかった状況です。各派閥の所属議員の支持先もいろいろで、そういう意味では、「自民党も変わってきている」感じもしますが、一方で、実際行われていることを見ると、旧来のドロドロも随分と感じさせます。

これまで個々の議員は、基本的に「誰を支持するかは、自分で決めたことではなく、派閥の判断に従っただけ」という言い訳ができました。一方、今回は自分の判断と、結果に伴って生じる責任が、議員個人に大きくかぶさってくることになります。“勝ち馬に乗る”という判断基準はもちろん大きいですが、そう単純なものでもなく、決選投票を見据え、多くの議員が今、「誰を支持すればいいか」、慎重に状況を見極めようとしています。

旧来の「派閥が仕切る総裁選」の様相は呈していませんが、派閥が母体となっている候補者も多く、また、“キングメーカー”による強力なバックアップ、他陣営からの引きはがし、総裁選後の閣僚人事などを見据えた駆け引きなど、様々な力関係·人間関係·思惑が複雑に絡み合って、展開していきます。推薦人を自派閥から貸し出すことで、決選投票では自分の推す候補者の支援に回ってくれ、という思惑も感じます。

そして、“キングメーカー”同士は、基本的に仲が良くない&主導権争いなので、「敵の味方は敵」で、「あっちの推している候補者は、自分は推さない」といったことが、大きな力学として作用しています。

またそもそも「同じ派閥だから、皆、仲が良い」なんてことは、全く無く、むしろ、同じ派にいるからこそ、派内抗争で、憎しみや対立が増幅するといった感じもあります。非常に強力なリーダーが、うまくまとめているときは、ひとつの塊として機能しますが、(派閥にしても旧派閥にしても)今はどこもそういう感じではなくなっており、仮に「決選投票ではまとまろう」と号令をかけても、その通りに行くかは微妙なところだと思います。

また、今回は候補者数が多く議員票が割れるため、党員·党友票の重みが増しています。これまで、力が強い国会議員は、地元の党員·党友票をある程度まとめる、ということをしていましたが、今回は、議員への締め付けが弱まっているのと軌を一にして、党員·党友への働きかけもあまり行われていません。候補者数が多いこともあり、誰に投票すればいいか分からない、最後まで論戦を聞いてから政策本位で決める、といった声も聞かれます。

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