妊活をめぐり夫と温度差を感じているという女性からの相談がありました。妊娠できる時間が限られている状態で、非協力的とも思える夫とは、一刻も早く別れたほうがよいのではないかとも感じているようです。看護師・僧侶として多くの人の心に寄り添ってきた、玉置妙憂さんが答えます。
【相談】妊娠を諦められず夫を責めてしまう
夫との関係に悩んでいるので相談させてください。2歳年下の夫とはアプリで知り合いました。夫は大手メーカーに勤務、性格も温厚で、周囲からも羨まれるような人です。
私は高齢出産に差し掛かる年齢ということもあり、すぐにでも子どもが欲しかったのですが、夫は特に考えていない様子で、「〇〇(私の名前)がやりたいようにすればいいよ」ということでした。
結婚してすぐに不妊治療を開始。タイミング法を半年試しましたがうまくいかず、人工授精で妊娠した時は私も夫もとても喜び、とてもいい関係でした。ところが10週目に流産してしまったんです。
そこで諦められればよかったのですが、「どうしても子どもを産まなければ」という強い切迫感に襲われ、口をつくのは妊娠のために必要なスケジュールや体調管理のことばかり。
私は職場には伝えていませんが、可能な限り仕事よりも妊活を優先しているのに、夫は精子の採取が必要な日に出張の予定を入れたり、私よりも妊活においてやることが少ないはずなのに非協力的に見えて仕方がありません。
女性は時間が限られているのに「しばらく妊活は休もうよ」と言われたことにも傷つきました。夫が職場の部下の女性から仕事の相談をされただけ、と言っていましたが二人で食事に行っていたことにもはらわたが煮えくり返る思いです。今、この相談も怒りに任せて書いています。
私が生まれてもいない子どもへの執着を手放せば夫と元の仲にもどれるのでしょうか。でも、ヒステリックな私の一面を知られた後で再び元の関係に戻れる自信はありません。
子どもを授かれば夫でなくてもいいのではないかという思いもあります。だとしたら時間が限られている中、一刻も早く婚姻生活を解消した方がよいのではないか、とも。
私と夫は一人っ子で、実家、義実家とも子どもを楽しみにしています。不妊治療をしている友だちもいないので誰にも相談できず苦しいです。(30代・女性)
【玉置さんの回答】あなたの心の奥底に横たわる想いは何でしょう
大変なご状況ですね。そういうことであれば、すぐにでも今のご主人と別れて、子どもを心から望んで、協力してくれる次の方と一緒になったほうがいいでしょう。
次の方は、仕事よりも、妊活を優先してくれる方を選びましょう。もしかしたら、そのために仕事を辞めてくれるかもしれませんよ。そうなれば、思う存分、妊活に時間を割くことができますから、安心です。あなたも、仕事より妊活を優先しているのですから、きっとお二人の息もぴったり合うでしょう。
念のための確認ですが、妊活のために仕事を辞めて、朝からごろりと横になって携帯ばかり見ている旦那さんに「子ども生まれるのにどうするの!ちゃんと働いてよ!」「子どもを育てるにはお金がかかるんだから。安定したいいところに就職してよ!」なんて、言いませんよね。だって、あなたの希望で、仕事よりも妊活を優先してくれる方を選んだのですから。
ところで、そもそもの話なのですが「どうしても子どもが欲しい」、その理由はなんですか。強い切迫感を感じてらっしゃるのは、伝わってきます。その切迫感は、どこからきているのでしょう。あなたの心の奥底に横たわっている想いは、いったいなんなのでしょうね。「どうしても子どもが欲しい」「どうしても子どもを産まなければ」は、ぷかりと浮き上がってきた泡のひとつにすぎません。その下に何があるのか、とても気になります。
それからね、たしかに子どもは可愛いですよ。それは本当にそうです。でも、そればっかりではないのです。ひとたび生まれてしまえば、その子に対する責任は一生涯続きます。「自分の時間」なんて、優雅なことは言っていられません。
自分のことは、すべて後回し。食べるものだって、観るものだって、行くところだって、すべてが子ども中心になります。しかも、そこまでして育てた子どもに「親ガチャに外れた」なんて言われることさえあります。そのあたりもきちんと、了承済みでしょうか。
なんかね、あなたのご相談をお聞きしていると「私が…私が…」って、ぜんぶご自分中心だからちょっと心配になってしまってね。そのくせ、妊活にしても、夫との仲が元に戻るかどうかにしても、そのへんは他人まかせなんですよね。
「夫が協力してくれない」じゃなくて、「協力してもらえるように死力を尽くす」んですよ。「元の仲にもどれるのでしょうか」じゃなくて、「もどれるように必死で努力する」んですよ。それが自分で自分の人生を切り開く、自分中心の生き方でしょう?
だいぶ厳しいこと言いましたね。ごめんなさい。もうさんざん必死で努力してこられたあとなのかもしれないのにね。とにかく、もう一度、意識の矢印をぜんぶご自分の内側に向けて、己の心の奥底をじっくり見回してみてください。そこにきっと答えがあるはずです。困ったらまた、いつでも声かけてくださいね。
◆玉置妙憂(たまおき・みょうゆう)/看護師。僧侶。二児の母。専修大学法学部卒業後、法律事務所で働く。長男が重度のアレルギーがあることがわかり、「息子専属の看護師になろう」と決意し、看護学校で学ぶ。看護師、看護教員の免許を取得。夫のがんが再発。夫は、「がんを積極的に治療しない」方針をかため、自宅での介護生活をスタートする。延命治療を望まなかったため、自宅で夫を看取るが、この際にどうしても、科学だけでは解決できない問題があることに気づく。夫の“自然死”という死にざまがあまりに美しかったことから開眼し出家。高野山にて修行をつみ高野山真言宗僧侶となる。その後、現役の看護師としてクリニックに勤めるかたわら、患者本人、家族、医療と介護に携わる方々の橋渡しとして、人の心を穏やかにするべく、スピリチュアルケアの活動を続ける。訪問スピリチュアルケアを通して、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)とQOD(クオリティ・オブ・デス)の向上に努める。非営利一般社団法人「大慈学苑」をつくり、代表を務める。課題解決型マッチングメディア「リコ活」でコラムを執筆。
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