日頃忙しく働く会社員にとって、ランチの時間はひと時の安らぎになっていることが多いでしょう。仕事から離れて美味しい食事をしながら気の合う仲間と楽しむ会話は、午後からの英気を養います。しかし会社員3年目のBさんにとって、ランチの時間は安らぎどころかストレスの原因になっていました。
ランチの時間が近づいてくると、Bさんの上司である部長のAさんが「今日は俺が奢るから一緒にランチに行くぞ!」と部員に声をかけていくのです。たしかにランチ代は奢ってもらえるのですが、Aさんとランチに行くと過去の自慢話を聞かされたり、仕事の進み具合について問い詰められたりするため心が休まりません。
しかしAさんの呼びかけを断って人事査定に響いたらと危惧するBさんは、せめて業務時間にやってくれたら我慢もできるのに…と嘆いています。このようにBさんを苦しめるAさんのやり方は問題ないのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞いてみました。
ーAさんのやり方は問題ないのでしょうか
Aさんのやり方自体は、必ずしも問題があるとはいえないです。Bさんにとっては苦痛かもしれませんが、上司の過去の話を聞いたり仕事の話をしたりするのが好きな人もいます。そのためAさんのやり方が悪だと断定することは難しいです。もしかしたらAさん自身がランチを奢ることで部員に喜ばれていると感じているかもしれません。
ー昼休み中に仕事の話をすると業務扱いにならないのですか?
労働基準法34条3項で、使用者は休憩時間を労働者の自由に利用させなければならないと定められています。したがって会社からランチの時間にミーティングするように指示された場合には、労働者の自由を確保していないこともあり業務扱いとされるでしょう。
ただ今回の場合は会社の指示はなく部長個人の指示なので、一概に業務時間になるとは考えにくいです。むしろ休憩をとるように指示している会社の意向を無視しているとして部長が注意される可能性もあります。
ー人事評価が気になって断りづらいという点は問題ありませんか?
もし部長の誘いを断った際に「俺の誘いを断るのか!」と怒られる場合は、ハラスメントと認定される可能性が高いです。部長の誘いを断ってなにか不都合なことが起こった場合には、会社が設置しているハラスメントの相談窓口に連絡することをおすすめします。相談窓口から会社に連絡が行き、適切な処置が下されるはずです。
ただ部長も嫌がっていると思っていない可能性もあるので、いきなり相談窓口に駆け込むのではなく「昼休みは仕事から離れたい」などと伝えて、ランチには行かない意思を示すのも重要だと考えます。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。