リモートワークやコアタイム出勤、ユニークな有給制度など、新しい働き方が次々と広まり、自由な働き方を得る人が増えている一方で、遠隔勤務を可能にした技術や管理ツールの登場で「監視&管理がどんどんキツくなっていく…」という声も聞こえてきます。中には「いくら何でもやりすぎなのでは!?」というケースもあります。
最初はうれしかったリモートワーク
Aさん(関東在住、40代、経理)は小学校低学年の子どもを持つ会社員。経理として長年同じ会社に勤務してきました。コロナ禍をきっかけにして、会社にリモートワークが導入され、そのタイミングで時短勤務からフルタイムに復帰。週に2~3回のリモートワークを申請して働いています。
通勤時間の負担を抑えられること、週に半分は子どもの帰宅を家で迎えてあげられることで、子育てと仕事のバランスを上手にとれている…と考えているものの、Aさんには疑問に感じていることがあります。
それは、テレワーク開始と同時に導入された「PC監視ツール」の存在です。
当初会社からは「勤怠管理として、勤務開始時刻と残業の時間を記録します」とだけ説明を受けていました。
ところが実際に運用が開始されてしばらくすると、上司からこんな言葉をかけられるように。「Aさんはいつも1時間10分すると、かならず5分ほど離席しますよね。何かルールでも決めています? トイレですかね? その場合、ちょっと長い気もしますけど」
確かにAさん、出産後トイレが近くなった自覚はあります。しかし、監視ツールでトイレに行く回数や時間をチェックされていたのかと思うと、ゾッとしてしまったそうです。
「社員の業務を見える化」がすべて裏目に
トイレの回数について指摘されるなんて…もしかしたらこれってセクハラでもあるのでは? と思いつつ、営業部署にいる後輩社員にも話を聞いてみることに。すると、はからずも、より深刻な愚痴を聞くことになってしまいました。
「営業はどっちかっていうと、『営業管理ツール』が入って負荷がすごいですよ…。営業にかける電話の本数どころか、先方の発言内容や、1本あたりの時間など、入力項目が今までExcelに入力してた時の3倍になっちゃって」
後輩は怒り心頭です。
「入力している時間も手間も半端じゃないのに、入力した情報を何かに活用してるかっていうと、何もやっていなくて…。ただ入力させて満足してるとしか思えないですね!」
さらにAさんの頭を悩ませているのが、最近新たに導入された「One on Oneミーティング」。なぜか直属の上司だけでなく、会社横断的にコミュニケーションを取ろう!という号令の下、他部署の上司とも時々セッティングされ、そのたびに規定の30分、ミーティングと称した「気まずい時間」が流れるのだそうです…。
会社が次々に繰り出す「社員の業務を見える化し、モチベーションを高めよう!」という取り組みですが、なぜかすべて裏目に出ているようです。Aさんは転職という言葉が脳裏にチラつく日々を送っています。
「会社や上司からの管理過剰感」が高いと離職意向が高くなる
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが2024年5月に公表した「会社や上司からの管理に関する意識調査」によると、会社や上司からの管理過剰感が高い会社には以下のような特徴があるとのことです。
・内向きで現場や顧客の声が通らない
・一度作ったルールや制度はなかなか撤廃・改善されない
・部門の縦割り意識が強く、組織間の対立が起こりやすい
・意思決定に際し、稟議や根回しが煩雑である
「ウチの会社のこと?」と思われた管理職の方、もしかしたら部下が「現在勤めている会社にはあまり長く勤めていたくない」と思っているかもしれません…。
【参考】
▽株式会社リクルートマネジメントソリューションズ/「会社や上司からの管理に関する意識調査」https://www.recruit-ms.co.jp/news/pressrelease/3249192733/