全国に埋もれた秘蔵の日本酒を見つけ出し、その魅力を国内外に発信している「Rユニコーンインターナショナル」(東京都)がオンライン販売サービスを始めた。その主力商品のひとつとして注目されているのが江戸時代の絵師、伊藤若冲(じゃくちゅう)にちなんだ日本酒「若冲」(谷口酒造)で、イタリア最大規模の日本酒コンテストで最高位を獲得した逸品。同社の高見広行代表も魅せられた「若冲」とはどんなお酒なのか?
世界でも人気になると予感できた銘酒「若冲」
海外での注目度が年々高まっている日本酒。輸出量も日本食ブームなどを背景に増加傾向にあるという。
そんな流れを受け、Rユニコーンインターナショナルは2019年12月に創業した。総合商社を50代半ばで退職し、同社を立ち上げた高見広行代表は「日本酒のブランディングに注力し、いま以上に日本酒に付加価値をつけていきたい」と意気込む。
起業後1年ほどは酒販免許の取得(輸出卸&通販小売)などに力を入れた。その一方で、隠れた銘酒発掘のために日本全国の酒蔵を訪問。これぞと思った酒蔵には商社勤務時代に培ったノウハウをいかし、海外販路の開拓などを提案した。
運命的な出会いとなったのが2020年。当時はあまり知られていなかった日本酒「若冲」の存在を知った。「一度飲んだら忘れられないほど、インパクトがあった」と振り返るほど、その味わいに魅了され、それと同時に「このお酒なら世界に通じると、確信しました」と力強く語った。
若冲生誕300年を記念して京都で誕生した日本酒
その「若沖」が誕生したのは2016年のこと。江戸時代に活躍した画家、伊藤若冲の生誕300年を記念して、京都・与謝野町にある「谷口酒造」(1871年創業)の社長で杜氏として蔵に入る谷口暢(とおる)さんが「若沖」の醸造を始めた。
なぜ、谷口酒造で?と思った人もいるだろう。それはラベルに使用されている原画の伊藤若冲筆「雨龍図(うりゅうず)」を所有していたことが大きい。細長い画面に画箋紙と呼ばれる紙の特性をいかした「筋目描き」という技法を巧みに使って描かれた作品だという。また銘柄の「若冲」は伊藤若冲の生家にほど近い宝蔵寺(京都市中京区)の住職が揮毫したものだそうだ。
原料は京都産(与謝野町)の酒造好適米「祝」を100%使用。低温仕込みで、高見代表は「白ワインのような酸味を少し感じつつも、酸味はどちらかと言えば控えめであり、お米のほのかなコクを舌先で感じながら、少しとろみを帯びたような甘味も感じられる」と話す。
ミラノの日本酒コンテストでダブル受賞
それから4年後。この味わいが世界でも認められることになる。2022年、イタリア最大規模の日本酒コンテスト「ミラノ酒チャレンジ」に「若冲純米大吟醸」が出品されると、最高位のプラチナ賞を受賞するという快挙を成し遂げたのだ。
そればかりか、ラベル、ボトル、キャップ、箱などの洗練さ、魅力、機能性を競う「ベストデザイン賞」も同時に受賞。高見代表は「自分ごとのようにうれしかった。それも名誉あるダブル受賞ですからね」と当時を振り返った。
世界も認めた「若冲」だが、年間生産数量がごくわずかな希少価値の高い日本酒とあって、なかなか入手しずらい。そこで高見代表はこの「若冲」をはじめ、日本の隠れた銘酒を1人でも多くの人に知ってもらいたいと「秘蔵の日本酒」を集めたユニークなオンラインショップ「秘蔵の日本酒 高見酒店」をオープンさせ、日本酒ファンを喜ばせている。
実際、日本酒は輸出が好調と言われる中、国内の消費量そのものは厳しい状況が続いており「若者の日本酒離れ」も進んでいる。高見代表は「若冲ファンだけでなく、このサイトをきっかけに1人でも多くの日本酒ファンが増えてくれるとうれしい」と話している。
▽オンラインショップ「秘蔵の日本酒 高見酒店」
https://hizouno-nihonshu.com/